マツダ技報 2019 No.36
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3.1 アンテナ素子設計技術の確立 (Fig. 4,Fig. 5)。 -127- 3. 技術上の課題と解決への取り組み Fig. 4 CAE Model (Rear Glass,Body Shell) Fig. 5 Measurement vs. CAE (FM Band) (3) 複数アンテナの最適配置 1) FMフェーズダイバーシティー受信への対応 Antenna1(AM/FM1) Antenna2(FM2/DAB) (1) AM受信性能確保のための要件抽出 AM性能補償用のAMチョークコイルを追加することな(2) CAE解析によるアンテナ素子設計 フェーズダイバーシティー受信は,2つのアンテナの受信信号の片方の信号の位相と振幅を制御して足し合わせることで,一方の信号に含まれる反射波成分を打ち消す仕組みであり,有効に機能させるためには,それぞれのアンテナの受信状態の相関を小さくする必要がある。複数のアンテナの受信状態の相関を定量評価するには,市場と同じ多重波環境が必要であり,現状では実走評価に頼らざるを得ないが,アンテナチューニングのたびに実走評価することは現実的ではない。このため,電波暗室内で評価可能な代用特性への置き換えを実施した。具体的には,アンテナ利得計測を行う際に測定可能なパラメーターである位相に着目し,二方向から到来する電波に対する位相差をダイバーシティー受信に使用する2つのアンテナ間で比較し,その値(位相差の差=Δθ)が大きいほど2つのアンテナの受信状態の相関が低いとの仮説をたて,実車検マツダ技報 No.36(2019) る新しいダイバーシティー受信技術(フェーズダイバーシティー)のカーラジオへの実装が進んでいる。 新世代商品では,本技術を実装したラジオを採用するとともに,アンテナ素子の最適設計により,ノイズなく良い音で聞こえるエリアを最大化することをねらいとした。 リアガラスアンテナは,視界確保用のデフォッガーの上方スペースに線状素子をプリントし,アンテナとして利用している。ハッチバック系車種はガラスの傾きが小さく,ガラス自体の面積も小さいため,セダン系車種に比べアンテナを構成するスペースが狭小となる。このスペースにAM/FMラジオ用アンテナ,デジタルラジオ(海外),地上デジタルテレビ(国内)等の数多くのアンテナ素子を所望の性能を確保しつついかに配置するかが課題となる。一方で,ハッチバック系車種においては,アンテナ素子近傍にノイズ源となるハーネスやハイマウントストップランプ等が近接配置されるため,対策が必要となる。 ここでは,これらの課題を解決するための技術のポイントについて紹介する。 く実用的なAM受信性能を確保するためには,アンテナ素子を配置するスペースの確保が重要となる。そこで,最初にこの要件を見極めるための実験検証を実施した。その結果,ボディーフランジとデフォッガーの最上段の線の間隔を一定以上離せば,AM性能の確保が可能であることを見出した。本要件は,車の外観や後方視界等の要件にも影響するため,車両開発の早い段階から関連部門と調整し,必要なスペースの確保に繋げた。 アンテナ素子を設計する際には,前述の配置スペースの他に,ボディー形状,ガラス形状,デフォッガー形状,給電部位置,他アンテナ素子との位置関係等,数多くの制御因子が存在する。従来は,実車を用いたチューニング設計が主体であり,試作車レス化や開発の短期化等が課題となっていた。課題解決のため,CAEによる性能予測と実車による測定との比較検証を積み重ね,モデルの規模や詳細に再現すべき部位の明確化を実施した。その結果,実用的な計算時間で精度の高い(実測値との乖離が帯域平均利得で2dB以内)予測結果が得られる条件を導き出し,アンテナ素子形状の最適化検討に活用した

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