マツダ技報 2019 No.36
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④ 意のままに止まれるブレーキ -5- ③ 路面からの入力を正しくリニアに伝えるサスペンFig. 2 New Ring Structure Body Fig. 3 Damping Wellbond Fig. 4 Comparison of Torsion Beam Structures ⑤ 人間の身体特性に基づいたペダル Fig. 5 Pedal Structures を効率よく高め,より自然な意図どおりの車両挙動を実現した(Fig. 4)。 人間の持つバランス保持能力を最大限発揮させるため,ブレーキを踏んだ瞬間から素早くなおかつ穏やかに制動力が立ち上がり,一定の強さを保ち,そして緩やかなペダルの戻しとともに滑らかに制動力が収まっていくブレーキ性能を目指した。その実現のため新型MAZDA3では,ブレーキの効き始めの分かりやすさ,ペダルの踏み戻しによる減速度の調整のしやすさ,強いブレーキを踏んでいてもブレを感じさせない剛性の高さに注力。ブレーキキャリパーの構造を見直し,パッドを押し出すピストンのシールの動きを最適化。ブレーキの強弱を問わず,常にブレーキパッドとローターのクリアランスを一定に保てるようにし,転がり抵抗を抑えつつコントロール性を大きく向上させた。 新型MAZDA3は,ペダルを踏むときに動かす筋肉の使い方に着目。どの筋肉がどの操作に適していて,どういう使い方をすれば効率がよいのか,という観点からアクセルペダル・ブレーキペダルともに綿密に造り込みを行った。アクセルペダルは,先代モデルから採用されているオルガン式ペダルを更に進化。アクセル操作に理想的な筋肉として,ふくらはぎの「ヒラメ筋」に注目。この筋肉は細かな動きと持久力の高さが特徴で,ヒラメ筋を主体に操作できるようにペダル支点をドライバーのかかと位置に近づける構造を新規開発。操作のスムーズ感と安定感,そしてコントロール性を高めた(Fig. 5)。 マツダ技報 No.36(2019) に加えて前後方向にも骨格を連続させることによって対角剛性を高め,バネ下から入力を遅れなく伝達し,より自然で違和感のない挙動を実現した(Fig. 2)。 また新開発の「減衰接着剤」及び「減衰節構造」を採用。これは骨格を接着する接着剤に緩衝材としてエネルギーを吸収させる機能を持たせたもので,振動エネルギーを熱エネルギーに変換することによってボディーに伝わるエネルギー減衰し,質量を増やすことなく静粛性の向上を実現した(Fig. 3)。 ション 新型MAZDA3は,フロントにマクファーソンストラット式,リアにトーションビーム式のサスペンションシステムを採用。ばね上に伝える力を時間軸で滑らかにするという考え方の下にこれまでにも追求してきた「意のままのコントロール性」をより自然に楽しめることを目指した。 フロントサスペンションは,入力に対してバネ下が正しい方向に動くようブッシュの内部構造を従来の単純な円筒形から球面形に変更。またロアアーム前側のブッシュとロアアームのボールジョイントの前後方向の距離を縮め,横方向の入力に対する前後方向の剛性をアップ。これにより横入力に対する前後方向の動きを抑え,遅れのない素早い伝達を実現した。更にサスペンションジオメトリーを新設計して,サスペンションストロークに対するステア方向の変化を低減したことで,コーナリング中のリニアな動きを実現。またリアのトーションビームには,中央と外側でビーム径を変えた新構造を採用。操作に対する応答性向上に効果的なタイヤ取り付け部の剛性

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