マツダ技報 2019 No.36
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)eaRnepOeyE %( t -133- る(4)。しかし,PERCLOSは,強い眠気に対する感度・ 5.3 わき見検知 わき見を前方に注意を向けていない状態と定義するが,る(6)(括弧内には各カテゴリーで表出する行動例を示(Fig. 5)。その上で,視野領域の中心は,ドライバー 1. 全く眠くなさそう 5.2 眠気検知 人間は眠くなると覚醒時と比べて瞬目の挙動が変化す(PERCLOS: Percent of the time eyelids are closed, Fig. 4)は瞬目の挙動を表す指標の一つとしてよく知られてい100 Eyelid closed time 20 0 Fig. 4 Eyelid Closure (PERCLOS) 2. やや眠そう 3. 眠そう 4. かなり眠そう し,深呼吸も見られる。瞬きも視線の動きも遅い。) (瞼を閉じる,頭が前に傾く。頭が後ろに倒れる。) から定量化した眠気指標の値を説明変数とした眠気レベル検知モデルを構築した。まず,実際の運転環境に起因するノイズの影響を除外したドライビングシミュレータルを構築し,次に実車走行で取得したデータを用いて検知モデルの検証を実施した。 検証の結果,実車走行では安全確認行動や同乗者との会話,太陽光の変化など,運転時の環境やドライバーの行動などが眠気検知精度低下の要因となることを確認した。これらの要因については,ドライバーモニタリングカメラのセンシング性能向上と画像処理技術の向上,及び眠気検知精度低下要因となるドライバー行動に対応するアルゴリズム構築によりその影響を低減している。 常に前方に注意を向け続けることが正しいとは限らない。具体的には,安全確認のために,前方ではなく,周囲に注意を向けている場合もある。また,前方以外に注意を向けていたが,周辺視で前方の変化をとらえ,前方に注意を向けようとしている場合もある。これらの,ドライバーの意図を反映した,わき見検知モデルの構築に取り組んだ。 まず,前方の注意を向けるべき領域が,ドライバーの視野領域に含まれていない場合を,前方に注意を向けていない状態としてリアルタイムに検知している。 このとき,前方の注意を向けるべき領域を,車両に搭載されたセンサーから計算される走行路の曲率と車速から,先行車両が存在すると想定される領域と定義したモニタリングカメラから出力される視線向きとした。また,視野領域の大きさは,車両の速度が高速になるほど狭くなる(8)人間特性に沿った範囲とした(Fig. 6)。 その一方,安全確認のために周囲へ注意を向けている状態を全てわき見として検出しては,必要な安全確認を阻害してしまう。よって,前方の注意を向けるべき領域が視野領域に一定時間以上含まれていない場合のみ,わき見として検知している。同様に,周辺視で前方の変化をとらえ,前方に注意を向けようとしている場合でも,わき見として検出しては,ドライバーの意思を尊重することができず,煩わしさを感じさせてしまう。よって,前方の注意を向けるべきポイントが周辺視の領域に含まマツダ技報 5. 非常に眠そう 5段階の眠気評定結果(正解値)を目的変数,瞬目波形(DS)環境で取得した瞬目波形データを用いて検知モデt No.36(2019) る。例えば,単位時間あたりの閉眼時間の割合精度は高いが,弱い眠気に対しては感度が低い(5)という特性がある。このように単一の指標でドライバーの眠気状態を正確に検知することは出来ない。そこでマツダでは,瞬目の波形から複数の眠気指標を定量化し,ドライバーの眠気が弱い状態から強い状態まで正確に検知するモデルの構築に取り組んだ。 ドライバーの眠気の状態を検知するモデルを構築するためには,ドライバーの眠気が実際にどの程度であったかを表す正解値が必要になる。眠気状態の正解値は,熟練した2名の評定者が運転中のドライバー表情を撮影した映像を観察し,評定する方法(顔表情評定)を採用した(6)。顔表情評定はドライバーの主観的な眠気,脳波などの生体情報や車両挙動など,従来から知れている眠気の指標との相関があり,その有効性が示されている(7)。また,ドライバーに眠気の報告を求めるなどのタスクを課す必要がなく,自然な運転中の眠気を知ることができるという利点がある。 顔表情評定は以下の5段階のカテゴリーに従って実施すす)。 (視線の移動が速く,頻繁である。瞬きの周期は安定している。動きが活発で体の動きを伴う。) (視線移動の動きが遅い,唇が開いている。) (瞬きがゆっくりと頻発。口の動きがある。座り直しあり。顔に手をやる。) (意識的と思われる瞬きがある。頭を振る。肩の上下動など無用な体全体の動きあり。あくびは頻発

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