マツダ技報 2019 No.36
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・Effectiveness(有効さ): (1)見る脇見の低減 ・Cognitive distraction(意識の脇見): (3)意識の脇見の低減 -137- 新マツダコネクトのHMI開発においても,この三つの3. 現行マツダコネクトからの進化点 in current Mazda Connect Optimum HMI device and layout Make commander based interaction ・Efficiency(効率): ・Satisfaction(満足度): (2)操作の脇見の低減 特定の目標を達成する上での正確さ,完全さ 目標を達成する際に費やした資源 不快さがない,及び製品へ肯定的な態度 現行マツダコネクトでは,この中の“有効さ”及び“効率”について注力したが,新マツダコネクトでは “効率”について進化させ,さらに“満足度”も改善することを目指した(Fig. 1)。具体的な施策は以下のとおりである。 運転中にドライバーの視線が前方から逸れる時間を低減するため,現行マツダコネクトでは視線移動時間・焦点調節時間・表示判読時間の三つの時間を最小化できる遠方上方の位置にディスプレイを配置した。新マツダコネクトでは,現行アクセラに対して視距離をさらに遠方化し,焦点調節時間の短縮を図っている。 現行マツダコネクトでは,ユーザーが“安定した姿勢で楽に”“操作部を見ずに”“間違えずに確実に”操作できるようにするため,コマンダーを用いた操作体系を構築したが,新マツダコネクトではコマンダーの形状とレイアウトを見直すことで,更なる自然な操作感を目指した。コマンダーの形状は,平均的体形の人間の手の大きさを基準に,より自然につかむことができるように直径を大型化した。また,レイアウトも同様に,コマンダーの位置を前方へ移動し,アームレストとコマンダーの高さの差を減らすことで,コマンダーを操作するユーザーの腕を適切に支えた上で,無理な筋負担なく操作できるように改善した。 意識の脇見とは,運転中に運転以外のことに気を取られる状態を指す。現行マツダコネクトでは運転情報とそれ以外の情報を明確に分離したゾーン配置とすることで,走行中に運転以外のことに気を取られる時間を最小限にすることをねらった。 新マツダコネクトの開発に際して人間研究を進めた結果,ユーザーの“注意資源”を最小化することが意識の脇見の低減につながることが分かった。人間が何かしらの刺激を受け取ってから,機械に対して操作をフィードバックするまでのプロセスは“認知”・“判断”・“操作”に分けられる。この中の“認知”の過程は,感覚器を通して得られた情報を無意識に処理するもの(低次処理)3.1 HMIの進化 現行マツダコネクトの開発では,HMIの再点検を行い,Table 1 Type of Distractions and Measures in Current Mazda Connect Type of distractions Measures Cognitive distraction Optimum information layout Visual distraction Manual distraction ・Visual distraction(見る脇見): ・Manual distraction(操作の脇見): ISO9241-11のユーザビリティの定義を参考にしている。 ISO9241-11では,ユーザビリティを“ある製品が,指Fig. 1 Evolution of Usability that Mazda Considers マツダ技報 No.36(2019) 人間にとって理想のインターフェースとはどうあるべきかを考えた上で,その実現に向けた開発を行った(1, 2)。具体的には,ドライバーの注意が散漫になり,本来維持すべき“運転への注意”が疎かになる状態(ドライバーディストラクション)に注目し,下記の分類に従って,それぞれのディストラクションの低減を目指して設計を行った(Table 1)。 前方道路から“心”が離れる際の不注意状態 前方道路から“目”が離れる際の不注意状態 ステアリングから“手”が離れる際の不注意状態 ディストラクションの低減という考え方を継続しながら,一層の進化を目指した。その指標の一つとして,定された利用者によって,指定された利用の状況下で,指定された目的を達成するために用いられる際の,有効さ,効率及び利用者の満足度の度合い”としており,各指標は以下のように定義されている。

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