(1)新世代ワイパーにおける進化概要 -145- Fig. 3 Visibility of A-PILLER Fig. 4 Wiper Appearance from Cabin (2)払拭性能 Fig. 1 Relation of Visible Ray and Wiping Fig. 2にブレードラバー先端における流体潤滑の模式Fig. 2 Fluid Lubrication of Wiper (3)広い視界 Fig. 3のように運転席側Aピラーは横断歩行者の確認をトロールすることで水膜厚をねらいの値にすることが可能である。 一方で,現実のワイパーシステムの設計においては,ラバーをはじめとした業界標準品の採用などの制約もあることから,第一段階としてモーター出力でコントロール可能な速度を払拭性能において注力する制御因子とした。 はじめ,視界の重要機能が集約している。 しかしここにワイパーの拭き残しによる汚れが残っていると,十分にその機能を発揮できない。この拭き残しは,部品の劣化,使用環境,車速など作動抵抗の変化によるワイパー反転位置の変動に対して,Aピラーとブレードを干渉させないための必要クリアランスである。よって,作動抵抗の変化を検出し,Aピラーとのクリアランスを縮小させる機能を追加することにより拭き残しを理想であるゼロに近づけることができる。 また,ワイパーを室内から見えないようレイアウトすれば下方視界を妨害させないようにできる(Fig. 4)。これは優れた車両外観見映えを実現するためにも効果的である。よって,アーム&ブレードの停止位置の理想はボンネット下である。ただし,単純にボンネット下に格納すると,背反として寒冷地要件であるアームのロックバック(アームを立てる動作)や積雪による拘束で発生する作動停止を起こす。そのため,使用環境によって停止位置を変え,負荷に応じて反転位置を変える機能の追加により下方視界妨害を解消できる。 マツダ技報 No.36(2019) 新世代ワイパーでは,払拭速度,払拭角など制御因子を拡大することで,払拭性能の向上に加え,Aピラー拭き残し低減,視界妨害の低減,更にウォッシャー洗浄効率向上といった視界視認性を大幅に向上させることをねらった。その実現のために,従来の物理的な構造進化に加えて,制御を中心としたソフト領域の進化を行った。 ワイパーはFig. 1のようにガラス面上の水を均一な厚さの水膜にすることで光の透過を均一にし,視界を確保している。この薄い均一な水膜を形成した状態を流体潤滑と呼んでいる(1)。 図を示す。Pは圧力,vは速度,lは接触長さ,h1,h2は払拭前後の水膜厚である。これらをコントロールし,あらゆる環境変化に対して流体潤滑を実現させる技術こそが,ワイパー払拭性能の本質である。 この考え方を基に,ラバーとガラスの間に潤滑の基礎方程式をあてはめて考えてみると,水膜厚は速度,圧力,接触幅の関数で表すことができる。よってこれらをコン
元のページ ../index.html#154