マツダ技報 2019 No.36
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3.4 システム概要 (2)ウォッシャー噴射妨害 (2)高速走行中の風によるオーバーラン対応 (2)システム構成 -147- Aピラー手前で止め,走行風による必要クリアランス不 3.3 ワイパーシステムの視界妨害 人間中心の考え方においては運転に関係のないものがWiper Arm Fig. 11 New Washer Nozzle of Mazda3 (1)モーター仕様 Fig. 10 Wiper Arm Set Position (Driver-side) Wiper Blade Washer Nozzle (1)ワイパーのボンネット下格納 ウォッシャーノズルをアームに設定し,噴射タイミングをワイパー作動と緻密に連動させることで,ドライバーは視界妨害なくガラス面の洗浄を行うことができる。 モーターの情報を基に,オープン作動(停止位置→反転位置)の一定区間でウォッシャー液を噴射するよう制御している。また着水点はブレード手前に設定した(Fig. 11)。これによりクローズ作動(反転位置→停止位置)では飛散させることなく,十分なウォッシャー液をブレードに供給できるようにした。ウォッシャーノズルはブレード後方に配置し,噴射はジェット方式とすることで走行風などの外乱を受けにくい構造としている。 この構造は高速走行中の洗浄性改善にも貢献している。従来のボンネット下からの噴射では風の影響によってねらいどおりにガラス面に着水せずガラス面洗浄に時間を要したが,アームに装着させたことで,高速環境下においても必要な水分をブレード全域に行き渡らせることができた。社内実験でも洗浄可能車速の向上を確認できている。 速度,角度,停止位置の制御を行うために,角度によって回転方向を調整できる反転制御タイプのモーターユニットを採用した。 車両の統合ECUであるセントラルボディーコントロールモジュール(C-BCM)で作動モードをコントロールし,使用環境や状況に応じた制御機能をモーターに機能配分した(Fig. 12)。 マツダ技報 No.36(2019) オーバーシュートにより反転位置付近でブレードのオーバーランが必ず発生する。そのため,Aピラーとのクリアランスを広げることなくオーバーラン干渉させないようにすることが課題であった。そこでこの現象が発生するのはAピラー反転位置以外の摩擦抵抗が高い時(ガラス面が乾いている)ということに着目し,ガラス面の摩擦抵抗から作動角を変動させることとした。抵抗値を検出し,モーターECU(Electronic Control Unit)にドライ判定機能を設け,反転位置以外の摩擦抵抗が大きい場合は作動角を縮小する制御を実装している。これによりワイパー払拭視界として必要なウェット状態の拭き残しを悪化させることなく,Aピラーの溜まった水によるオーバーラン干渉を解消している。 そのほかに,Aピラー部でオーバーランが発生する使用環境が高速走行時である。一般的に走行風によるオーバーラン量は車速に応じて拡大するため,従来は開発目標車速に応じてAピラーとのクリアランスを設定してきた。走行風の大きさを事前に予測する方法は車速情報を使用するなどいくつかあるが,より実環境に近い制御とするため,新型MAZDA3では特定作動角度における作動抵抗値を用いている。これにより,走行風によりオーバーランが大きいと予測される時には,積極的に反転位置を足の課題を解消している。 見えることはノイズである。ドライバーが運転に集中できるようボンネット下格納とウォッシャー噴射タイミングの制御を行った。 新型MAZDA3ではアーム&ブレードをボンネット下に配置している(Fig. 10)。 一方でボンネット下にワイパーがあるとアームを立てることができず利便性が悪化する。そこで位置制御によりサービスポジション機能を追加している。この追加機能によりアームを立てたい時には簡単なコンビスイッチ操作でアームを立てられる位置まで動かせるようにした。 また,降雪地域などにおいてボンネット下に雪が堆積することでアームがロックし動かなくなることも弊害事象として存在する。これに対しては作動トルクに閾値を設け自動反転機能を追加している。これにより降雪環境においても弊害を感じることなく作動可能としている。 なおボンネット下格納にしたことは視界や外観見映えの向上に加えて風切り音低減にも効果があり車両品質向上に貢献している。

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