マツダ技報 2019 No.36
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4.1 技術の手の内化と機能最適化 車両は,さまざまな機能ドメイン(ボディー/PT-150- 3. 車両電子制御システム開発構想 Fig. 1 Difference in Functional Configuration to Realize Old System and Current System Fig. 2 Obtained of Technology and Optimization of (Power Train)/IVI(In Vehicle Infotainment)/ADAS(Advanced Driver Assistance System)など)のFunctions Fig. 3 I/O Function Optimization 今後,これまで通りのシステム追加による機能追加を継続した場合,電子制御機器は更に増加し,搭載可能な車両スペースを浪費し続ける。併せて,システムの一括性を保つために,他システムと類似機能をもつセンサーの搭載を行うなどの無駄を発生させる状況に陥りかねない。 その結果,居住性悪化・デザイン制約を引き起こし,最終的には電装品搭載スペースが枯渇し,新機能を搭載したシステムが搭載できなくなる。更には重量増加による燃費性能悪化や,コストアップにもつながる。 また,システムを一括で追加する開発手法は,サプライヤーからシステムを丸ごと購入するビジネススタイルが主流であり,この手法を続けることで機能のブラックボックス化を誘発し,マツダの技術力低下も避けられない。 更に,車の電子制御化が進んだことにより,機能安全規格や情報セキュリティ対応など,今後の市場導入にて電子制御機器が対応しなければならない新たな技術要件が発生している。これらに対応するためには,サプライヤーが開発を主導していた実装領域にまで踏み込んだ理解が必要となる。このままシステムの丸ごと購入を続けた場合,高度な技術開発力がある一部のメガサプライヤーへの依存が進む。 以上の結果から,このままではマツダの実現したい機能のタイムリーな市場導入ができなくなる懸念を抱いた。 新型MAZDA3の車両電子制御システムは上記問題の解決と,今後の機能進化を支える基盤とすべく,以下の流れで開発構想を進めていった。 まず,自身が問題解決するために,電子制御で車の機能を実現する手段を理解し,個別に開発できるレベルまで技術の手の内化を行う。 次に,個々に開発した機能を車両全体視点で最適化する。 最適化のポイントは,全ての機能を視野に入れ,機能間で重複する処理を統合し,連携が必要な処理については最も効率的な情報の受け渡し方法と処理分担を明確にする。その結果,車両全体視点で最適化された機能群(統合機能)が完成する(Fig. 2)。 最後に,入力・出力機能を最適化する。統合機能によって集中処理が実施されるため,入力側は外部情報の入力,出力側は車両の振る舞いに関わる動作のみを実現すればよく,入出力情報の重複が解消され,シンプル化が図れる。 また,最適化された機能とシンプル化された入出力情報が受け渡しされることで,真に必要な部品のみを車両に搭載した無駄ゼロの状態に持っていける(Fig. 3)。 この活動により,車両全体視点で最適化された車両電子制御システムが生み出される。 前述の開発構想に従い,新型MAZDA3の車両電子制御システムを開発した。 集合体となっており,車両全体視点での技術の手の内化と車両展開には膨大な時間を要するため,段階的に最適化することとした。 マツダ技報 4. 新型MAZDA3の車両電子制御システム開発 No.36(2019)

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