マツダ技報 2019 No.36
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-156- 3. 具体的な活動事例 Fig. 6 Surface Adjustment on Body Exterior Fig. 7 KODO Project for Stamping Die “燃費とパワーの両立”などの領域で,多岐にわたりクラフツマンシップが存在する。ここでは「魂動デザイン」の実現に向けた事例を紹介する。 視覚的なブランドアイデンティティの要素である「魂動デザイン」は,外板パネルのビードに頼るのではなく,繊細なパネル曲面で反射する光の陰影で,造形のダイナミズムを表現するデザインである。この繊細な曲面をボディー全体で表現するためには,従来のパネル間のスキや段差の精度向上に加え,ボディー全体で統合した曲面の造り込みが必要であり,プレス金型~完成車組立までの全領域で,光の反射を造り込む量産準備活動を実践した。 まず,製造に関わる全ての関係者がクレイモデルを見ながら,デザイナーの表現したい造形の意図を聞いて提供価値の目標を共通理解する(Fig. 3)。 次に,各領域の製品特性に合わせた光の反射の計測手法と単品部品の曲面精度を制御する製造技術を進化させる。具体例として,鉄板パネル部品では,実成型工程のビッグデータとCAEを活用して,プレス成型後に弾性で元に戻るスプリングバック現象を見込んだ金型形状の設計技術と,高精度の金型製作技術を開発することで,パネルの面精度を向上した(Fig. 4)。 3.1 心のフロントローディングと統合的量準プロセス クルマには,“より美しく”,”よりリニアな応答性”,Fig. 3 Clay Model Presentation Fig. 4 Pursue KODO Design on Steel Panel Surface またバンパー成形においては,高温射出から冷却までの樹脂流動と収縮を予測するCAEを進化させ,射出成形に伴う樹脂変形をキャンセルする金型設計により,柔らかく変形しやすい樹脂の面精度を向上した(Fig. 5)。 Fig. 5 Activity for Plastic Parts Surface 更に,ゼブラ状の光源の映り込み形状で,全部品曲面のつながりを関係者で確認し,擦り合わせることで,ボディー全体で一体感のある光の陰影を表現した(Fig. 6)。 また,ボディーカラーにも光の陰影へのこだわりを展開し,ソウルレッドクリスタルメタリックなどの高意匠カラー開発では,従来の平面に近いパネルでのカラー評価ではなく,魂動デザインの躍動感を造り込むために進化させた金型製造技術で,魂動デザインのエッセンスを凝縮したデザインパネルを製作し(Fig. 7),このパネル上での陰影表現をデザイナーと確認しながら,塗膜構造のファインチューニングを実施することで,造形の陰影を際立たせるカラーを実現した(Fig. 8)。 マツダ技報 No.36(2019)

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