マツダ技報 2019 No.36
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Fig. 11 Paint Film Design to Realize Optical Property -157- 3.3 低コスト/低投資の高精度材料と精密加工技術 高精度材料の例として,高意匠カラーでは,塗料の原Fig. 8 Color Fine Tuning on KODO Panel 3.2 暗黙知の形式知への変換 具体例として,高意匠カラーのソウルレッドクリスタFig. 9 Image Conversion to Optical Property Fig. 10 Visual Perception Fig. 12 Skill Measurement System このカラーの塗膜構造の要件の1つは,10μm以下の1ベース塗膜に含まれる円盤状アルミフレークによる反射光の強度を上げて反射方向を揃えることである。後述するアルミフレークの高精度材料の開発と,その塗膜内の配列を均一化する塗布工法が必要であった。また,塗布工法については,塗装の匠の,スプレーガンの距離や塗り重ねの時間間隔を調整しながらアルミフレークの配列を整える塗布動作を解析して,ロボット動作に変換し,塗料組成と塗装工法をセットで開発することによって,匠の技の量産化を実現した。 また,匠の技能の形式知への転換については,最先端の人間工学とIT技術を活用した取り組みも行っている。プレス金型表面の仕上げ加工では,モーションキャプチャ/アイトラッカ/筋骨格シミュレーションで,0.1mmを研削して磨くグラインダ作業などを計測し,単純な動きや力だけでは解明できない「コツ」を,可能な限り数値化して,体の使い方や注視ポイントなどについての課題を客観的に把握することで,初心者の早期習熟と匠の更なるスキルアップに活用している(Fig. 12)。 料の製造工程まで遡り,高輝度アルミフレークを開発した。この原料は,通常,アルミフレークメーカーの製品バリエーションから,塗料メーカーが選択するが,今回のカラー感性表現に求められる反射特性をもつ製品は量産化されていなかった。そこで,反射特性とフレーク形状の物理目標を,塗料メーカーを通じてアルミフレークメーカー様に提示し,製造工程に遡って3社での共同活動マツダ技報 No.36(2019) ルメタリックの開発では,デザイナーが求める感性のキーワードは「宝石の深い赤」「潤い」「金属感」「マグマの躍動感」であった(Fig. 9)。これらの感性を,視神経の感度特性と脳の画像処理(Fig. 10)を考察しながら,塗膜反射光の波長分布などの光学特性に変換し,塗膜構造を設計した(Fig. 11)。

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