マツダ技報 2019 No.36
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] ] sxa sxa・Materials:SS400 ・Size:100×100×35 (Height: 0.1mm) mmmm≦26 ≦34 ≦0.07 ≦0.09 [[i Y i Y (1)眼球運動の分析 (2)身体動作の分析 -167- 5階級設定では,初級から上級までの4階級は,国家技能5. 技能のメカニズム解明 Hand grinder Precision [mm] [min] ≦0.03 ≦0.04 ≦0.05 Datum Surface Grind portion Fig. 4 Comparison of Eye Movement Takumi X axis [mm] <Standard deviation> Takumi:27.3 Beginner X axis [mm] <Standard deviation> Biginner:62.1 100mm×35mmの一般構造用圧延鋼材(SS材)を用いFig. 3 Materials of Rank Examination Table 1 Accuracy and Time in Each Rank Class Class5:Takumi Class4:Upper Class3:Pre-upper Class2:Intermediate Class1:Beginner 向けてどのポイントを伸ばしていくか的確に指導することが重要になる。そのため,技能計測した結果から,指導につなげるトライアルを行った。そこで,4章で階級設定した匠級と初級の技能者各1名を比較した。 以下,眼球運動・身体動作・筋活動量の3要素におけるデータ処理方法と判明したことを述べる。 視線計測器から得たXYZの注視点座標から,まばたき等で発生するエラー値を除去し,注視点の分析を行った。その中でも,匠級技能者と初級技能者で注視点座標の分散値に差があることが分かった(Fig. 4)。匠級技能者は視線移動が少ない。一方,初級技能者は視線移動が多い。このことから,初級技能者は見るべき部位が定まらず,情報探しや判断遅れによって時間を費やしていると考える。更に,少ない視線移動が,頭部の変位量を少なくし作業姿勢が安定することから,寸法精度にも影響が出ると考える。このように,無意識・無自覚に行っている視線移動からも行動情報を得ることができた。 モーションキャプチャーで得られる44個のマーカーの位置情報と3個のフォースプレートの床面反力の計測結果を分析した。身体動作は,41個のマーカーの位置情報を基に,19個の身体部位(頭・首・胸・左右肩・左右上腕・左右前腕・左右手・腰・尻・左右腸骨・左右膝・左右足)の重心位置を得ることができる。グラインダーも同様に3個のマーカーから重心位置を得た。この合計20箇所の重心位置を分析した。両者の動作の特徴をFig. 5に示す。匠級技能者は体幹の動きが小さく,Fig. 5左に示すようにグラインダーと前腕の左右への動きが同調している。それに対して,初級技能者は,Fig. 5右に示すようにグラインダーと体幹を含む全身の動きが同調して5.1 技能の解明トライアル 技能階級を定義し,目標が明確になれば,目標達成にTime ≦10 ≦14 ≦18 マツダ技報 No.36(2019) 検定の取得や経験年数によって定めているが,匠級は,上級の中でも20年以上の業務経験を持ち,指導・育成の経験したことがある「だれもが認める技能の優れた人」という周囲の官能評価で定められていた。そのため,まずは,技能階級の定義を明確にすることから始めた。 そこで,当部門に所属する金型仕上げ技能者全員に対して,グラインダー作業試験を実施し,技能計測システムによって一連の行動情報を計測した。試験は,あらかじめ被削材中央に0.1㎜凹の基準面を設けた100mm×て,グラインダーで基準面と同一高さになるまで均一に研削する内容とした(Fig. 3)。 グラインダー作業試験の被削材寸法精度と研削時間から算出した平均値と標準偏差を基に各階級の設定を行った。「魂動デザイン」を造り込む上で必要な寸法精度と研削時間を両立できる5名を匠級と定義し,各階級の精度・時間の閾値をTable 1にまとめた。この試験によって,技能者の定量的な技能階級を定義することができた。また,新旧の階級の人数分布を比較し,大きな乖離がないことも確認した。この定量的な技能階級の定義によって,自身の立ち位置と閾値が明確になり,上の階級に挑戦するための目標を設定しやすくなった。

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