マツダ技報 2019 No.36
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mm tnemecapsD ][ il -169- 6.2 治具・センサーを活用した定量指導 技能カルテを基に指導と訓練を行う。まずは,訓練者6. 技能指導の定量化 ■Skill medical record <Precision/Time> <Measurement> <Grinder movement information> <Eye movement> <Slill movement> <Musculosleletal exercise> Tool Amplitude[mm] Velocity[m/s] Frequency[S] Tool Force[N] Pressure Sensor Jig Pressure Sensor Jig Fig. 8 Grinder Movement Information FSRセンサーを用いて匠級の基準値の加圧力で音が鳴るFig. 9 Pressure Sensor Jig(in-house production) Tool Amplitude (XY axis) Time[S] Trainee Takumi Training Material 6.1 技能カルテによる定量評価 4章で述べた階級判定試験の際に技能計測システムからFig. 7 Example of Skill Medical Record の技能カルテと作業中の動画を使って,訓練者と匠級の特徴と違いを説明する。その後,Fig. 8に示すグラインダー動作「左右の振幅[mm]」「動作速度[m/s]」「ツール反力[N]」が匠級の基準値に近づくように,実際にグラインダー作業をしながら訓練を行う。 効率的な成長につなげるには,動作中に指摘し,補正しながら体で感覚をつかんでいくことが重要である。しかし,技能カルテは,データ分析に若干の時間がかかる。 そこで,匠級の基準値を設定した指導治具と指導センサーを用いて定量的に伝えることができる環境を整えた。 グラインダーの「左右の振幅[mm]」は,匠級の基準値である振幅に切ったマグネットを被削材に貼り付けて動作の目安にした。「動作速度[m/s]」は,グラインダーを振る周期に換算し,匠級の基準値の周期で音が鳴るように,メトロノームを設定した。「ツール反力[N]」は,圧力センサーを設計製作した(Fig. 9)。 以上のように,匠級の基準値をセンサーや治具へ設定し定量的な指導が可能となった。そして,指導中に技能者が自らの気づき・発見に変換すると同時に,ツール動作を身体動作へ習得していくことが可能となる。更に,マツダ技報 No.36(2019) らず,金型製作における磨き作業や溶接など,その他の技能動作の特徴を特定できる可能性があると考えている。 得た一連の行動情報を基に,従事者の技能カルテを作成した。例をFig. 7に示す。 この技能カルテに記載した行動情報は,項目ごとに訓練者と匠級を並べて表示しており,技能をより定量的に比較・評価できる。更に,訓練者の長所と短所を細かく評価できる。また,5章の分析手法から得た特徴量を多く含んでおり,本人が理解し動作につなげやすい「グラインダー動作情報」を技能カルテの評価項目に追加した。この技能カルテを指導前後に作成することで,技能の変化を定量的に把握でき,成長に向けた指導ができる。 また,筋骨格モデルリングシミュレーションからは,技能動作の疲労度[%S] (疲労度[%S]=総筋活動量[%]×作業時間[S])や腰椎間反力[N]を求めることができる。これらの情報を技能カルテで管理することで,作業中の身体負荷が評価でき,体にやさしい作業姿勢を伝えることができる。このように,技能面だけでなく,身体負荷の影響も評価できる技能カルテを作成した。

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