マツダ技報 2019 No.36
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(2)寸法精度の課題 -193- 2. プレス成形上の課題と取り組み Front pillar inner Hinge pillar reinforcement Hinge pillar reinforcement Front pillar inner 1310MPa材を採用し,お客様に安心・安全なドライブを2.1 高張力化に伴うプレス成形の課題 鋼板の高張力化が進むにつれ,プレス成形においては,Fig. 1に示すようなさまざまな課題が表面化してくる。そ Fig. 1 Challenge in Press Forming UHSS (1)成形性の課題 プレス成形は鋼板を塑性変形させることで目的の形状を得ることができる。しかしながら,高張力鋼板になるほど降伏応力と最大引張応力が上昇するためスプリングバック(弾性変形)量が増すことで,成形された鋼板を金型から取り出した際にスプリングバックにより大きく形が崩れてしまう課題がある。 傷が見られた。刃先の損傷が進展すると,プレス部品の品質阻害要因になるため,せん断加工性の課題はこの刃先の損傷問題を解決することである。 れも自動車骨格部品で前側面の衝突安全性を担う高強度な部品特性が求められる重要な部品である。ヒンジピラーレインフォースメント(以下,HピラーRF)の形状の特徴は深い断面ハット形状でボディー下部の片側はすり鉢形状をもつ成形難易度の高い部品である。一方,フロントピラーインナー(以下,FピラーIN)は,ハット形状部品に蓋をする部品となるため断面は比較的浅いため剛性は低く,平面視でみると緩やかな弓型をしているため高張力化に伴い寸法精度が課題となる。 マツダ技報 (3)せん断加工性の課題 1310MPa材のせん断加工では,加工の過程で刃先の損2.2 1310MPa材適用部の特徴 新型MAZDA3への1310MPa材の適用部品をFig. 2に示す。Fig. 3に示す特徴的な2部品を例に以降の話を進める。いずFig. 2 1310MPa Grade Materials in All-New Mazda3 Fig. 3 In-House Manufactured 1310MPa Parts No.36(2019) が良い手法である。既にマツダ技報にて1180MPa級高張力鋼板の採用の報告をし,これまでも高張力化を推進してきたが,新型MAZDA3では1310MPa材冷間プレス部品を世界で初めて採用した(1)。高張力化に伴う材料特性の変化は,プレス成形及び溶接組立加工が困難になり,加工方案・加工条件及び要具での対応が必要となる。本稿では,提供することを目指した自動車ボディーの造り込みを紹介する。 の中で本章では,1310MPa材の適用において難易度の高い,プレスの成形性・寸法精度とせん断加工性の課題について紹介する。 プレスの成形性の課題は割れ,しわである。これらは高張力化に伴い鋼板が硬くなるほど延性が低下することで発生する。また同様に材料の縁から発生する縁割れも顕著になってくる。

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