マツダ技報 2019 No.36
207/321

■著 者■ -198- 5. おわりに 参考文献 Fig. 17 Feedback Locating 楽しんでもらいたいという思いで,世界で初めての1310MPa高張力鋼板をボディーに使用した。これまで積み上げてきたプレスとボディーアセンブリの技術を,精度品質を含め一貫したプロセスとして組み込んだ。新型MAZDA3の人馬一体実現の裏側には,このようなつくり方の技術の詰め込みがあることをお分かりいただけたと思う。 この新手法で実現した乗り心地を新型MAZDA3で楽しんでいただきたい。 について,マツダ技報,No.32,pp.65-70 (2015) 酒井 明 庄司 庸平 新井 直樹 松本 茂 末長 昭大 1310MPa材を使うにあたり精度の作り込みに,実際に計Fig. 16 Nominal Locating 4.2 拘束の取り組み 部品を位置決めした後は,接合時に変形しないように拘4.3 精度保証 見直しを行った位置決めと,シミュレーション結果から狙いのボディ精度を確保するための穴と面のことである。これまでの考え方は,図寸で決められた位置の穴と面により絶対値を完全固定することで部品とボディー精度を保証するものであった(Fig. 16)。 測した部品精度をフィードバックすることで,部品精度を保証する考え方へ変えた(Fig. 17)。これにより,接合面精度の調整範囲と量が適正化され,ボディー精度を造りこむための条件を早期に実現することが可能となった。 束をする必要がある。今まで部品を拘束するために必要な力は,治具標準で決まった力で拘束していた。1310MPa材の導入するに先立ち,今までと同じ標準で問題ないかを再検討するため,2.4で実施した成形シミュレーション結果から加工基準にかかる反力を求めることで適正な拘束力を設定した。適正な力で拘束した部品同士を,接合によりその位置にとどめ,解放しても狙いの精度が保たれていることが条件となる。成形シミュレーションの結果から求めた拘束力をCAEで解析を行い,部品同士を接合し拘束力を解放したときにおこる精度変化が発生しないことをCAE上で検証することで仮説として完成させた。 得られた必要機能が確実に折り込まれていることを確認した後に,ボディー精度に対して狙いの精度が保証可能か,実機で検証を実施した。3次元測定器を用いて,工程の精度,部品の精度,位置決めから解放までのプロセスを計測していくことで狙いのボディー精度が確保できていることが確認できた。新しい構造に対して,CAEで事前予測を行い,現物で確からしさを確認するというプロセスを進めることで,図面検討段階中の構造変化に迅速に対応し,予測から考えられる対策をプロセスごとに反映していく活動により,狙いのボディー精度品質を早期に実現させた。 お客様に意のままに動く「人馬一体」のドライブフィールと安全性を兼ね備えた車をお届けし,クルマのある生活を(1) 坂野ほか:1180MPa級高強度鋼板のボディーへの適用マツダ技報 田丸 真司 No.36(2019) 矢野 峰治 吉崎 真吾

元のページ  ../index.html#207

このブックを見る