マツダ技報 2019 No.36
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3. パーティングラインのばらつき要因の特定 Variation at parting line Slight hinge movement -200- 2. 蓋物部品組付工程の現状 Drooping by self-weight Misalignment Fig. 1 Continuous Surface of Parting Line Fig. 2 Mass Craftsmanship Fig. 3 Factors of Variation at Parting Line Fig. 4 Relation between Hinge Movement and Door Major classification 1. Variation by part accuracy 2. Variation by part positioning accuracy 3. Variation by processing change Large misalignment フードをボディーシェルへボルト締結する“蓋物部品組付・折合精度向上”が欠かすことができない。 プレス成型精度,ボディーシェル組立精度向上については,その成果をこれまでも多くの既出の論文で語られており,それらを進めることを前提に,本稿では蓋物部品組付・折合精度の向上について述べる。 車体組立領域の最終工程である蓋物組付工程は,ロボットによる自動組付作業と作業者による折合調整作業で構成する。 ボディーシェル及び蓋物部品の寸法精度は,たくさんの溶接接合工程を経て組み立てるため,定めた公差範囲内でのわずかな寸法ばらつきをもつ。自動組付工程では,そうした寸法ばらつきを自動で計測し補正して組み付ける仕組みに取り組んできた。 しかしながら,従来の自動工程ではパーティングラインの不均一な隙や段差を完全になくすことはできておらず,次の折合調整工程の熟練作業者の行うチェックと折合調整を介して隙・段差の寸法精度を保証している。 更に,マツダでは技能による造り込み“希少性・感動”と生産性の高さ“高速・高精度”を両立させる自動化技術“Mass Craftsmanship (職人技の量産化)”を目指している(Fig. 2)。 今回その取り組みとして,隙や段差のばらつきを最小限に抑え,ロボットによる自動組付作業までの工程で品質を完結させる「折合調整の自動化」に挑戦した。 ドアパーティングラインの隙や段差のばらつきを最小限に抑えるために,まず,その全ての要因を洗い出した。それらは影響する精度の種類によって大きく下記の3つに分類できた(Fig. 3)。 ①【部品精度】部品精度のばらつき ②【設備精度】設備の部品位置決め精度のばらつき ③【加工時変化】ボルト締付時の挙動によるばらつき そして,ひとつひとつのばらつき量を調査した。すると,部品精度のばらつきや設備の位置決め精度のばらつきに比べて,加工時変化のばらつきが大きいことが分かった。公差内のわずかな誤差しかないパーツどうしを組み合わせ,精度管理された設備を用いて図寸ねらいで組付作業を行っても,加工結果としての隙や段差の誤差が元の部品や設備のもつ誤差の和の倍以上の誤差になるケースが確認できた。 ドアはヒンジの締結のみで保持されるため片持ちはりの状態となる。そのため,ドアのヒンジ支点近辺の根元側で発生したわずかなばらつきは,ドアの支点から離れたドアノブ近辺の先端側では桁ひとつ上の大きなばらつきに増幅されて,ドア位置精度を著しく悪化させる。 マツダ技報 Mass Craftsmanship No.36(2019)

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