Hinge pillar -201- 4.2 対策システムの考え方 今回2)の方針に重点を置いて新システムを構想するにMounting surface of upper hinge Mounting surface of lower hinge Fig. 5 Mechanism of Variations at Hinge Tightening Upper hinge Door Lower hinge る訳でもなかった。それとは因果関係の少ない多数の要因が存在し,それらもそれぞれが相応のばらつきをもっており,ヒンジ密着性を改善するだけでは目標を達成し得ないことも分かった。 て次の2つの方針を考えた。 1)全ての部品精度レベルを引き上げるとともに,従来の図寸ねらいのドア組み付け技術を極めることで精度が保証できるようにすること。 2)計測補正の技術を駆使して,ロボットによる自動組付工程で図寸ねらいを越え部品の公差内のわずかなばらつきをもキャンセルすることのできる高度な折り合い調整機能を有するドア自動組付技術を開発すること。 従来から1)の方針に沿った地道で着実な取り組みを継続してきたが,今回は新たな着眼点として2)の方針を取り入れた。 ばらつき発生メカニズムを特定していくなかで分かったことは,その発生要因のすそ野の広さと扱う精度が従来の数字と桁が変わって高い精度になることである。ばらつき発生要因を掘り下げれば掘り下げるほど,すそ野は広がり,増幅される前の微小なばらつきに着目することになり,扱う数字の桁が下がり,より高い精度保証が必要になる。 しかも,その要因は,部品精度,部品材質など部品に起因するものから,照度,温度,湿度など工場内の環境に起因するものなど多岐にわたり,それぞれの要因どうしに因果関係はなかった。1)の方針に沿って目標を達成するためにはあらゆる要因に対して対策を打つ必要があった。しかし,期間やコストに制約があるなかで,個々の工程の全てのばらつき要因を洗い出して潰し込んでいくことには限界があり,また現状から扱う数字の桁を下げて精度管理レベルを上げていくことは難しく,1)の方針だけで今回掲げた高い目標を達成することは現実的に困難であった。これまでの活動で極小化してきた部品の公差内のばらつきや工場内の環境を今回は前提としてとらえ,それら全てに起因する加工結果への影響を計測補正してキャンセルする新システムを造り込むという新たなめには必要であると考えた。今回マツダは変革を目指しめざし,そこに重点を置いて取り組んだ。 あたり,管理が容易でかつ限定された既知の制御因子をもつシステムへの置き換えを考えた。汎用のセンサー・4.1 対策方針の決定 「折合調整の自動化」を実現する大きな対策方針とし2)の方針への取り組みが「折合調整の自動化」実現のたマツダ技報 4. 対策方針と対策システムの考え方 No.36(2019) ひとつの例でいえば,ドア本体外板面を把持してヒンジのボルトを締結することによってドアをボディーに固定し,外板面の把持を解除したとき,ドアはヒンジによって片持ち状態になる。そのため,ドアは自らの重量負荷によって下がり方向の変位が発生する。その変位量はヒンジからの距離に比例してヒンジから遠い箇所ほど大きくなる。ヒンジの回転軸芯と穴のはめあいは厳しい公差で管理されているが,微小なばらつきはある。その微小なはめあいの差はドア自重による下がり変位に影響するためドアのヒンジから離れた先端側では距離に比例して大きなばらつきとなる(Fig. 4)。 しかも実際の締付加工時のヒンジ面では更に複雑な変化が発生する。 ボディーにドアを組み付ける前はボディー側ピラーの上下のヒンジ取り付け面とドア側の上下のヒンジの面とが完全に一致するということはなく,必ずどこかが接し,どこかにわずかにマイクロオーダーの隙ができるという状態となる。 これをボルトで締め付けると,ボディーとヒンジは完全な面当りとなって密着するが,そのときヒンジにはわずかにひねりが発生し,片持ちであるドアのヒンジ付近の根元側で発生したそのわずかなひねりは,ドアの先端側では桁ひとつ上の大きなばらつきに増幅される(Fig. 5)。 そのばらつき方向もそれぞれの部品の微妙なばらつき具合の組み合わせで決まるため不規則な変化となるのである。 つまり,ドアの位置決め精度を左右する要因として最も大きな要因がヒンジ面の密着性であり,ドア先端側に増幅して伝搬されるヒンジ面法線方向の精度は桁ひとつ下の高い精度管理が要求される。しかし,現状の精度保証体系の管理水準を変更することは現実的には困難である。それがドア組付精度が自動組付だけで保証できない最大の要因であった。 ただし,そのばらつきは他の要因のばらつきと比較して最も大きかったが,全体のばらつきの大半を占めてい
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