マツダ技報 2019 No.36
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本システムの特徴は以下の点である。 -202- は(1)「補正ロジック精度」・(2)「繰り返し再現精度」の 5.1 補正ロジック精度 補正ロジックを決定するにあたり数理的に考えれば,Fig. 6 Operation Flow of Door Fitting System ・2段階の締付に対応する2段階補正を行う。 (1)「補正ロジック精度」・(2)「繰り返し再現精度」・(3)「補正動作追従精度」・(4)「計測精度」の4種の品質(4)「計測精度」の2種の制御因子の発生源は「ロボット」(1)「補正ロジック精度」は蓋物全体の誤差を最小限に(2)「繰り返し再現精度」は3章の「ばらつき要因分析」ロボットによって対象物のばらつきを計測し補正を行う「計測補正システム」はその置き換えが可能であると考えた。 しかし,従来から取り組んでいた蓋物組付けの「計測補正システム」ではその置き換えはできていなかった。3章で述べたとおり,ドア組付けにおいては①部品のばらつきや②設備のばらつきよりも③加工時変化のばらつきが大きい。しかし,従来の「計測補正システム」が計測しキャンセルしていたのは部品と設備のばらつきのみであったためである。加工による変位までも含めて計測し補正しなければ,加工に伴う多くの誤差因子を排除することができず,目標とする安定したシステムへの置き換えとはならない。そこで,一度加工してその変位を計測し補正し再度加工しなおすのである。そうすればどのような外乱要因があろうとも,一度発生したばらつきは全てキャンセルできるため,元の工程のもつさまざまなばらつき因子について扱う数字の桁を下げてまで極端に高い精度で管理する必要がなくなるからである。この「加工変位計測補正システム」を造り上げ,導入することにより,ドア組付けシステムは安定したものとなり飛躍的な精度向上が期待できるものとなる。 しかし,その代わりに「加工変位計測補正システム」特有の因子については新たに管理が必要になる。 を維持するための因子である。 しかし,これらのうち(3)「補正動作追従精度」と「センサー」など限定的であり,適用先としては汎用性があるものである。それらの分析はいちど行えば水平展開が可能な内容のものが多い。これらは対策を標準化・手順化してしまうことが容易である。 対象部品特有の事象について考えなければならないの2種の制御因子に絞られる。 する一貫した考え方で「補正ロジック」を組むことで保証する。 で得られた知見から「繰り返し精度」に特化した精度保証対策を打ち保証する。 対象部品に応じて上記2点を部分修正していくことができれば,このシステムには汎用性があるため広く一般的に適用し多数の工程の問題を一気に解決できる可能性がある。ただし,このシステムの適用対象はボルト締付など可逆的な加工方法に限定される。 「加工変位計測補正システム」を導入するという方針をとった場合,課題は上述の4種の精度をいかに上げるかということに絞られた。これら個別の課題の具体的な解決策について以下に詳細説明をするが,その前にまず本システムの概要について説明する。下記に動作フローを示す(Fig. 6)。 ・加工前のドア単体,ボディー単体,そして加工後のドア・ボディーの位置関係を計測する。 ・ドアの主な把持にドアヒンジクランプを有するツールを使用しロボットでその搬送・補正を行う。このツールを以下マテハンと呼ぶ。 ・ボルトを緩めてから補正して再度締め付ける マツダ技報 5. 「加工変位計測補正システム」の立案 No.36(2019)

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