マツダ技報 2019 No.36
212/321

の3点が一致させられないケースの方が多い。 -203- 3箇所のポイントの座標を計測すれば,3次元的な位置は 5.2 繰り返し加工再現精度 いかにして「繰り返し加工再現精度」上げるかが本シ 5.1.1 基本的品質保証体系 マツダでは単体部品からアッセンブリーまで一貫した5.1.2 補正方法と計測ポイントの取り方 位置補正に比べて回転補正は,手順を誤ると誤差を増5.3節に後述するバックラッシュが発生するとき,その補は3章の「ばらつき発生要因」での分析を生かし,(1) 2段5.2.1 2段階補正 「ばらつき発生要因」で述べたとおり,ヒンジ密着性まう危険性があるため,回転中心は最も保証したい重点管理ポイント付近に設定する。 なお,回転中心には以下の3種類のものがあるので混同に留意する必要がある。 ①最も保証したい重点管理ポイント ②ロボットの物理的な回転中心 ③アウトプットとして補正出力するロボットのツール座標系の中心 理想はこの3点が共通であることであるが,実際の生産ラインでは物理的制約やメンテナンス上の問題から,こ①は主たる補正ロジック上の回転中心に設定される。 しかし,実際の回転動作は②を中心に行われるため正は②を中心に計算する。①②を基準に算出した補正値は実際の指示値として扱いやすいに③に換算する。 ステムの最も重要な課題である。 「加工変位計測補正システム」を導入することにより多数の管理困難な因子まで管理する必要はなくなるが,相対精度の保証が必要になる。 ただし,従来システムのように部品ごとにその因子がばらつくことを制御するのではない。 本システムでは一度加工して計測し,加工を解除し補正を掛けたら,再加工する。2度の加工の間にその因子が変化しないように維持すればよい。しかし,この課題の解決には部品固有の知見が必要であった。本システムで階補正の採用と(2)ドア把持機構の変更によりこの課題を解決した。 は最大のばらつき要因である。補正前後でヒンジ密着性が変化すれば繰り返し加工の再現性も保証できなくなる。そのため2度の加工の間に行う補正は,同一ヒンジ平面内での2次元補正でなければならない。 本システムでは,2次元補正を2度行うことで3次元の補正を行うこととした。最終精度は「繰り返し加工」で保証し,1度目の補正はその条件を整えるための予備補正の位置づけとなる。1度目の補正⇒1度目の締付⇒2度目の補正⇒2度目の締付の順に行う。1度目の補正はドア・ボディー単体の計測結果からドアをボディーにセットする位置を補正する。ヒンジ密着度を上げるため,ボディー側は上下のヒンジ取り付け面を測定し,ヒンジがそれに沿うようにボディー前後方向軸周りの回転補正を行う。2度目の補正は加工時変化を計測してセット位置をボディマツダ技報 No.36(2019) 確定しねらいの位置への補正量も確定する。しかし,実際の部品の実長はばらつきをもつためそれだけでは位置が確定せず自由度をもつ。個別最適の考え方で測定ポイントを増やせば,システムの一貫性がなくなり複雑化し車全体としての精度を阻害する恐れがある。品質保証体系と部品特性を知り,組付け工程で補正すべき特性と前工程で保証すべき特性を切り分け,測定ポイントや補正先を取捨選択し,誤差を最小にするための一貫した考え方に基づいてロジックを決定する必要がある。 加工基準を使用して品質を保証している。部品単品の各機能部位の位置精度は加工基準からの位置で保証し,その加工基準を部品組み上げ時も通して使用することで全体を保証する。加工基準を介した間接保証体系である。本システムでは補正のために美観機能部位そのものである外殻を計測するが,直接保証体系を取るわけではない。測定ポイントは加工基準からの位置関係を重点管理されたポイントを選定しており加工基準に準ずるものとして扱う。その基準ポイントからボディー全体の位置関係を把握することで,個別のパネルではなく蓋物全体のあるべきベストな配置を割り出してそこへ向けた補正を行うのである。それにより,計測ポイントでは加工基準からの部品誤差がキャンセルされた補正となり精度は上がる。だが計測されていない部位については,部品単品において計測部位からの位置関係が保証されていることで保証される。加工基準が基準穴から外殻へ変換されただけであり,間接保証の考え方を変えるものではない。 本システムは「位置補正」と「回転補正」を組み合わせて補正を行っている。また,従来の図寸ねらいの補正に加えて組み付ける部品精度に応じた補正機能である「実長補正」を織り込むが,実長補正は位置補正のみで行い,角度補正は行わない。部品単品のひずみは補正することはできないので,この特性は前工程で保証されていることが前提となる。また,ボディーの測定ポイントはフロントドア・リヤドアのどちらを組み付けるときも一貫した測定ポイントを使用する。 幅してしまう恐れがあり,下記の点に注意して設定する必要がある。 ・計測時の計測ポイントの設定と選択 ・補正時の回転中心点の設定 基準計測ポイントは全体的な誤差を極小にするため,補正対象物のできるだけ対極の端に近い位置付近で距離を長めに取るのが原則である。 回転補正の中心点の設定によっては誤差も拡大してし

元のページ  ../index.html#212

このブックを見る