マツダ技報 2019 No.36
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②1穴当たりの加工時間が1秒前後以下と短く,切削条-210- 5. 適応制御加工による効果 Fig. 10 Conceptual Diagram of Feed Rate Control Fig. 11に示す。刃具の摩耗状況とシリンダーライナーのFig. 11 Machining Example by Real-time Adaptive Fig. 13 Machining Example by Feed Rate Control Control Fig. 12 Transition of Override 件が同じ場合,その平均切削力から次のワークで切削送りオーバーライドを変更(以降,ワンサイクル制御と記載)するロジックとした。Fig. 10に示すようにワンサイクル制御は切削力の平均値が,許容値に入るよう切削送りオーバーライドをワーク1台ごとにコントロールするもので,1台ごとの加工時の送り速度は一定である。 前回加工時の切削力が許容値を超えた場合は設定した割合で今回加工時の送りオーバーライドを下げることで切削力が許容値に入るようコントロールし,前回加工時の切削力が許容値を割った場合は設定した割合で今回加工時の送りオーバーライドを上げることで切削力が許容値に入るようコントロールする。 なお,①・②どちらの制御もオーバーライドの補正周期・量,及び切削力の許容値等を任意に設定できるよう開発した。 加工した部品の加工品質情報に,刃具ごとの加工数や切削力の情報を追加し,これをサーバーに蓄積することで量産加工における刃具の新品時から摩耗交換時までの切削力の推移と加工品質の相関を把握することが可能となった。この技術によって切削条件の設定や刃具諸元の選定を,定量的かつ実態の加工状態で比較・選択できるようになり,より高い切削効率を引き出せるようになった。 エンジン部品のシリンダーブロックにおけるボア荒ボーリング加工にリアルタイム制御を導入した事例を硬度バラツキに対し,随時切削送りオーバーライドをコントロールすることで,切削力によるボアライナー下端の割れを監視しながら,加工時間を平均で約25%短縮した(Fig. 12)。 エンジン部品のシリンダーヘッドにおける油穴加工にワンサイクル制御を導入した事例をFig. 13に示す。刃具が新品時には切れ味がよいため,設定した上限送り速度で加工を行っている。刃先の摩耗に伴い,設定した上限切削力の2300Nを超えると切削送りオーバーライドを下げ,目標切削力の範囲に送り速度をコントロールする。 マツダ技報 No.36(2019)

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