マツダ技報 2019 No.36
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-213- 2. 軽量化の追究 3. 残留応力の発生メカニズム Fig. 2 Necessity of Residual Stress Coupled Analysis 3.1 シリンダーヘッド鋳造方法 一般的にシリンダーヘッドは低圧鋳造法(ロープレッ(Advanced Precision Mazda Casting,以下APMC)をFig. 3 APMC Process Flow 2.1 軽量化に向けた課題 一般的に,薄肉化や除肉により軽量化するには,アルFig. 1 Outline of Cylinder Head 2.2 開発部門での耐久性評価 Fig. 2の上段に耐久性評価基準を示す。製品設計段階シャーダイカスト(以下,LPD))と呼ばれる工法で製造されるが,マツダでは世界オンリーワンのアドバンスド・プレシジョン・マツダ・キャスティングプロセス採用している。 これは常温造型高精度砂型(以下,砂型)に低圧注湯する鋳造法をベースとし,砂型の一部に金型を取り入れることで鋳造組織の緻密化を図りつつ,シャワーを用いた急冷工程を取り入れた工法である。砂型と「冷却プレート」と呼ぶ金型を積み木のように組合せ鋳型を形成し,アルミ溶湯を注湯する。その後,狙いの材料素性になるように常温まで緻密に冷却制御し,砂型を除去することでシリンダーヘッド素材品を得る工程となる(Fig. 3)。 一般に広く採用されているLPDに比べ,必要な部位のみ機械的性質を大幅に向上しつつ,薄肉な形状が形成できる。また,冷却制御により急冷による焼き入れ効果と復熱による時効効果を得ることができ,熱処理レスによる低コスト生産を実現している(Fig. 4)。 マツダ技報 No.36(2019) 能や燃費を大きく左右する重要なエンジン部品である。製品機能向上のため燃焼や冷却をより緻密に制御する必要があるため,付帯部品の増加や冷却回路の多系統化が進み,シリンダーヘッドの形状は複雑化している。複雑になるほど形状間に余肉がつき重量が増加している。 ミ溶湯の湯流れ性や鋳型の造型性といった生産性に加え,軽量化による製品機能への影響も考慮する必要がある。例えば,強度を維持しつつ軽量化しても,鋳造後の素形材に残存する応力(以下,残留応力)が局所的に大きくなると,耐久性が悪化する。これを防ぐために,生産性評価のみならず,生産技術と開発部門が一体となり,開発初期段階から残留応力を考慮し製品耐久性を評価することが重要な課題である。 で運転中にかかる応力を予測し材料の疲労限界に対する余裕度をCAEで評価している。 運転中にかかる応力は燃焼による熱応力と製造工程で発生する残留応力に分けられる。Fig. 2のグラフに示すが,部品が持つ残留応力を,従来では「過去の実測を基に設定した任意の均一値をシリンダーヘッド全体へ与える」との条件で行っていた。しかし,実際はそれより残留応力が低い部位が大部分であるため,軽量化できる領域を逃していた。一方で,残留応力が局所的に高くなる部位は,開発耐久評価時に手戻りが発生していた。つまり,CAEで軽量化を進めるには,より実態に近い耐久性検証が必要で,そのためには部品が持つ残留応力分布を考慮することが欠かせない。

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