マツダ技報 2019 No.36
223/321

3.2 残留応力の発生メカニズム -214- 4.2 全工程測温実現と測温精度向上 4. 生産工程における定量化とモデル化 Fig. 4 Comparison between LPD and APMC Fig. 5 Temperature Curve of APMC Process 4.1 モデルベース技術の考え方 まず,現場・現物での実態測定により対象となる現象(Output)の相関式(Process)で記述する(以下,IPO)。この式を構成する変数の内,コントロール可能Fig. 6 Residual Stress In-Process-Out APMC工法では鋳造の各工程がシーケンシャルにつな 先述のとおり,APMC工法の鋳造~冷却工程では,製品のさまざまな部位がダイナミックに温度変化することで,Fig. 5に示すように大きな温度ギャップが生じ(金型と中子によるアルミの冷却差及びシャワー照射部の急冷),各部位で温度収縮差が発生するため,熱応力が発生する。そして,この熱応力(圧縮・引張応力)が冷却中に変化しながら最終的に釣り合った状態になり,素形材内部に残留する。以上がAPMC工法で残留応力が発生するメカニズムであり,残留応力の予測には各部位の温度変化を正しく計算することが最も重要である。 を徹底的に定量化し,現象のからくり(原理)を解明する。次に,このからくりを入力情報(Input)と出力情報な変数を制御因子,そうでないものを誤差因子とする。後は,相関式を解くために最も適したツールを使ってシステム化を図るが,製品開発では部品形状が重要な変数となるため,FEMなどの3次元形状を計算可能なCAEソフトを使うことが多い。 本稿では,まず全鋳造工程の温度測定によりキーとなる各工程での温度変化のからくり(IPO)を解明した。次に,これらIPOを計算できるようにシステム開発するとともに,計算パラメーターとして必要となる境界条件や物性値を詳細調査した(Fig. 6)。以下にその詳細を述べる。 がっているため,工程ごとの温度変化を定量化する目的で全工程をまたいで連続測定する必要がある。 ところが,一般的な有線タイプの測温機器では配線が長くなるため取り回し性が悪く,断線トラブルなどにより連続測定は困難であった。そこで, Fig. 7-①に示すように測温機器を有線タイプから無線タイプに切り替えてこの問題をクリアすることで,配線が取り回せない工程(搬送中,シャワー冷却工程等)の温度プロファイルも取得可能となった。 測定精度向上のために,熱電対のセット方法にも改善を加えた。APMC工法の特徴である冷却プレートに溶湯が接触して急冷される部位では,計測ポイントが数mmずれるだけでも測定結果が大きく変わってしまう。溶湯の流れにより熱電対が倒れてセット位置がずれることを防ぐため,湯流れ解析結果から確認した溶湯の流れ方向に沿わして熱電対を設置した。加えて,熱電対自体の剛性を上げられるように,飛び出し部へセラミックベースの接着剤で補強を行うなどの改善を加えることで測定ばらつきを抑制している(Fig. 7-②)。 マツダ技報 No.36(2019)

元のページ  ../index.html#223

このブックを見る