マツダ技報 2019 No.36
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① -215- 4.4 熱間機械的性質値測定と分布考慮 凝固収縮過程では鋳型による拘束が残留応力に影響す 5.2 残留応力予測精度確認 以上の取り組みにより,Fig. 9に示すように,注湯/5. システム開発 Fig. 7 Temperature Measuring Test 4.3 熱伝導特性の測定 冷却過程ではアルミと鋳型との熱の授受による温度変5mm程度しか砂型温度が上昇ないことが判明した。この5.1 ハード・ソフトウェアの改善 システム化にあたり,温度モデルを再現するソフトFig. 8 Core Numbers and Calculation Time ±10℃以内に収めている。得られた温度曲線を残留応力(Fig. 10)。 ② ウェアはAPMC工法特有の制御因子を織り込むため,市販の鋳造解析ソフトを自部門でカスタマイズして利用している。APMC工法のダイナミックな温度変化が残留応力に大きく関わるが,ソフトウェア導入時は急激な温度変化を伴うシャワー工程を再現することが出来なかった。理由として,シャワーが当たる鋳物面は,冷却プレートや砂型,空気,水といった各工程で異なった材料と熱の授受を行っているが,材料設定変更をせず熱伝達係数のみで合わせ込みを行うと,内部の熱伝導計算が不確かなので,大きな誤差が生まれたためである。そこで,専用の解析プログラム(ロールオーバー~シャワリング)を作成した。具体的には,材料設定を砂から水へ変更させるため,シャワリング工程を独立して計算させ次工程のインプットとなるようなプログラムを開発した。また,シャワーノズルの水流量や噴霧範囲から冷却能分布を再現する仕様も開発した。具体的には,冷却時の壁面熱伝達率を計算する上で,沸騰現象を再現するのは膨大な計算時間がかかり現実的ではない為,各種冷却条件と熱伝達率との重回帰式を品質工学で効率的に構築し,ソフトウェアへ組み込んだ。 応力モデルを再現するソフトウェアは市販の弾塑性構造解析システムをそのまま使用するが,温度モデルとの連成はインターフェースを開発した。ハードウェアは,非常に重い計算になること想定してクラスター化対応を前提とすることで,段階的なCPU数増強により計算時間を短縮可能とした(Fig. 8)。 凝固~シャワリング~室温までの全域で温度曲線を解析の温度荷重にインプットすることで,鋳造工程で発生する残留応力を過渡的に確認できるようになったマツダ技報 No.36(2019) 化が支配的である。よって鋳型の高温時の熱物性を正確に把握することは重要である。 砂型は砂が98%以上を占めていることから,従来は砂であるケイ素の熱伝導物性を入力していた。しかしながら,砂型は砂粒と微量の接着剤の集合体であるため,製造工程の上下限品の密度と接着剤の配合量をパラメーターとしてテストピース砂型を製作し,全組み合わせで熱伝導特性を実測した。結果,砂型は砂単体よりも伝熱性が低く,量産条件(温度・時間)では,溶湯接触面から約結果から熱伝導率を算出し解析へフィードバックした。 る。そこで,鋳型状態で常温から高温域500℃までの,線膨張係数,応力歪線図等を実測した。 一方,シリンダーヘッド鋳造材(AC4B相当材)の機械特性については,従来は現物から一つの応力-ひずみ曲線を測定して使用していたが,APMC工法の特徴に合致させるべく,急冷部と徐冷部での機械特性の差を考慮できるように改善した。具体的には,ブロック面は金型で冷却するため微細な結晶組織になり強度が高いが,ミドルデッキ・カバー面といった領域は相対的に強度が低い。この機械的性質の分布を考慮するために,冷却速度と機械的性質の相関式を作成し解析条件へ織り込んだ。

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