マツダ技報 2019 No.36
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(3)経済性 (1)環境性 (2)商品性 -226- で2層構造となっている。表層を形成するカラークリア層2. 技術課題 3. 解決手段 Fig. 1 Production Process 1.2 本技術の特徴 本技術は,環境に優しく透明性のあるバイオエンプラをFig. 2 Schematic Illustration (Fig. 3)。 Fig. 3 Conventional-Technology / Developed-Technology ことができた。バイオエンプラは,2015年にロードスターの内装意匠部品に初めて採用して以来,現在国内で販売している全ての乗用車の内装意匠部品や外装意匠部品に採用している。その過程で,当初のロードスターのカップホルダーリングの小型内装意匠部品から,現在はCX-5のフロントグリルの大型外装意匠部品に採用できるようになるまで,技術を進化させてきた。 使用した表層樹脂と,基材表面に柄を刻み込んだ基材樹脂との2層成形により(Fig. 2),深みのある色合いと精緻感,陰影感など,従来の技術では実現困難な意匠を実現させながら,環境負荷の低減を可能にする技術である。 植物由来原料を使用していることからCO2排出量の削減や石油資源使用量の削減,更に塗装工程廃止によるVOCの削減により,優れた環境性能に貢献することができる。 本技術は,これまでのバイオエンプラ技術の商品性を更に向上させたもので,従来技術では実現困難な意匠を実現できる技術である。具体的には,深みのある色合いを持ちながら光を受けると精緻な柄が浮かび上がる新しい仕立てはまっすぐ光を透過・減衰させ,基材を形成するブラックメタリック層の表面に柄を刻み込み,入ってきた光を反射・吸収させることで,黒の精緻さと深みのある透明感を両立させることができる。 本開発材料を着色し2層成形することで,従来技術である塗装やフィルムでは実現困難な新しい仕立てを実現することが可能となり,従来必要だった塗装工程やフィルム工程などの製造工程を廃止することで,部品レベルでコスト改善に貢献することができる。 技術課題は,自動車内装意匠部品に要求される「表面意匠性」「表面意匠耐久性」「機械物性」「生産性」を両立させることである。それぞれの代表的な要求性能として,表面意匠性は「深みのある色合い」と「精緻感と陰影感」,表面意匠耐久性は「耐光性」と「耐傷つき性」,機械物性は「耐衝撃性」と「耐熱性」,生産性は「成形性」と「生産効率性」などがある。従来であれば,これらの要求性能を塗装やフィルム,基材の樹脂で満足させてきた。しかしながら,今回目指した表面意匠性は深みのある色合いを持ちながら光を受けると精緻な柄が浮かび上がる新しい仕立てである。従来の塗装では表面の平滑感を保ちながら精緻感を実現させることが困難であり,従来のフィルムでは深みのある色合いと精緻感を両立させることが困難であった樹脂部品性能に大きな影響を与える因子として,「材料」「構造」「工法」があり,これらの3つの因子を用いることで,樹脂部品性能をコントロールすることができる。今回は,Table 1のように,材料からのアプローチとして「表層樹脂の最適化」「基材樹脂の最適化」,構造からのアプローチとして「表面構造の最適化」「断面構造の最適化」,工法からのアプローチとして「2層成形技術」「金型仕様の最適化」を行うことで,「表面意匠性」「表面意匠耐久性」「機械物性」「生産性」の要求性能の両立を図った。 今回は,表面意匠性の実現にポイントを絞って紹介する。 マツダ技報 No.36(2019)

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