-231- 3.2 評価仕様 人間が動物として普遍的に備えている機能の本質を明評価方法 Fig. 5 System to Measure whole Body Movement 2.2 評価範囲 人間の挙動から運動動作に関する人間の本質を抽出するFig. 4 Memory Trace and Motion Correction 3.1 計測手段 人間の挙動を計測する際に多く用いられている光学式るため,車体に固定されているカメラの位置も変化している可能性も高くなり,計測精度に影響を与えている可能性を否めない。 これらの課題に対し,身体に密着するスーツに嵌め込まれたセンサー同士の相対位置によって挙動を導出する方式となるウェアラブルモーションセンサースーツであれば,カメラの設置場所を気にする必要がなく,走行中の車体の変形も気にする必要がない。その一方で,人間や動物の脊柱は多関節によって構成され直立時に加わる負荷を分散するため,側面から見ると,緩やかなS字になっていることが知られている。この機能に着目し表面的な挙動の基になっている骨格の動きを可視化することとした。具体化にあたり,ウェアラブルモーションセンサースーツの計測結果を基に逆運動学解析を行えば,脊柱に留まらず,頭部や手足など全身の骨格の動きを網羅的に可視化できる。これらのシステム構成をFig. 5に示す。 ウェアラブルモーションセンサースーツはXsens MVNを使用し,逆運動学解析はnMotion musculousを用いることとした。 らかにすることが本研究の目的であるから,匠でなければ感じ取れない微小な物理量の差になる仕様違いだと意味が無い。一般人でも違いがハッキリと分かる仕様違いを用意する必要がある。しかし,試験路を変えたり車両を変えたのでは意味がない。日時,試験路,車両,被験者を固定し,アクセル操作とハンドル操作に共通して大きく影響を与えるユニットの中からシートを選定し,誰もが「良かった」マツダ技報 No.36(2019) ためには,被験者固有の癖や好みが計測値に入り込まないように工夫する必要がある。前述したように,信号が赤から青に変わるもしくは前の車両が動き始めるとアクセルを踏み込んでいるが,頭の中で電卓を叩きながらアクセル踏み込み量を算出している訳でも,メジャーで測りながらアクセルを踏み込んでいる訳でもない。車両を運転する誰もが普遍的かつ自然に行っている動作であり,これくらいの力加減でアクセルを踏み込んだら,これくらいの加速度を得たという過去の記憶の中から,今回のシーンに適した加速度が得られそうな力加減を無意識に選択し,選択した力加減を無意識にトレースしてアクセルを踏み込んでいる。 これらを整理した模式図をFig. 4に示す。人間が無意識にアクセルやハンドルを操作する時間を0.5秒と仮定し,操作を開始する0.5秒前から無意識操作を終えてから0.5秒後のトータル1.5秒間に注目して,アクセルとハンドルの操作及び人間の挙動を評価することとした。 モーションセンサーは,被写体に取付けたマーカーがカメラの視野に入っていることが必須条件である。この計測技術を,本稿で紹介する車両を運転する人間の挙動の計測に適用する場合,車室内にカメラを設置する必要がある。しかし,カメラを設置する車室内は遮蔽物も多いため,被写体に取付けたマーカーを漏れなく捕捉し続けられる位置にカメラを設置することは困難を極める。加えて,カメラとマーカーの相対位置からマーカーの空間座標を導出しているため,カメラの位置が変化しないことも必須条件になっている。しかし,走行中の車体は絶えず変形し振動してい
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