マツダ技報 2019 No.36
253/321

Fig. 11 Aim of Injecting Small Quantity at Each -244- Injection Stage Fig. 12 Shorter Combustion Period 1.8Lにおけるエンジン回転数[rpm]とトルク[N・m]に対するWLTP時間頻度分布及びEGR率を示す。このように,最Fig. 9 NOx Inflection Point Fig. 10 EGR Ratio Map with WLTP Time Frequency 4.2 高応答インジェクタによる燃焼改善 新たに採用したピエゾ駆動インジェクタは1.5Lのソレノせず,エミッションを改善できる。Fig. 10に,1.5Lまたは適な排気量を選択することで,高負荷でのNOxを低減 した。同時に,最高出力を上昇させることができ,ディーゼルらしく力強い,高回転まで伸びのある加速性能を実現 した。 イド駆動に比べて高応答な噴射が可能である。この特性を活用し,熱効率改善とノック音低減による静粛性の向上を図った。燃料噴射段数を増やし,1段あたりの噴射量を減らすことで,噴霧ペネトレーションが下がり,燃料の燃焼室壁面への付着量を低減させ燃損失を低減した。同時に,燃焼ガスと燃焼室壁面を空気層で断熱することで壁面熱伝達を低減し,熱効率を改善した(Fig. 11)。 また,1.5Lと同一の噴射段数にて,高応答化したインジェクタによって,従来に比べて噴射間隔を短くすることが可能となった。メイン噴射前に近接噴射を行うことで,メイン燃焼の傾きを抑制することができノック音が改善。更に,アフター噴射近接化により煤再燃焼量は減少するものの,噴射後の燃料だれ減少によって煤発生量も減少するため,煤排出量は同等となり,燃焼期間が短くなることで,熱効率が改善した(Fig. 12)。 ノック音は燃焼による加振力とそれを伝える部品の共振特性及び放射特性により決まる。これまで,熱発生の山谷の間隔を最適にコントロールすることでノック音ピークを下げたり,ナチュラル・サウンド・スムーザー(4)によって構造系の共振を下げる等の手段で改善を図ってきた。 本エンジンは熱効率を改善しつつ,さらなるノック音改善を可能とする新たな燃焼を採用した。燃焼加振力は,噴射から着火までの着火遅れが長く,着火する際の予混合気量が多いほど強くなる。そこで,燃料を最大6段で分割噴射することによって,上死点付近で各噴射の燃焼を連続的につなげることで,各噴射の着火遅れを短くし,燃焼初期の熱発生の傾きを抑制した。これにより,等容度の改善にて熱効率改善しつつ,ノック音の低減が可能となった。 マツダ技報 No.36(2019)

元のページ  ../index.html#253

このブックを見る