マツダ技報 2019 No.36
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-249- また,D/Sの反力を受けパワートレイン全体が,ねじ3.3 制御構成 Fig. 5 Control Constitution PCM)の限られた処理能力の中でシンプルなモデルを用Fig. 6 Estimated Domain Fig. 8 Added the Mount Model タイヤまでの常時締結状態のモデルだが,クラッチの締結状態が変化するとシステム特性が実際と大きくずれるため,クラッチ操作中から締結後所定期間はD/Sねじれ状態の推定精度を確保できなかった。その対策として, ることで,クラッチ締結状態の影響を受けないモデルとなり,推定精度を確保した。これにより,発進・変速時に従来制御より早くフィードバックを開始できるため,振動収束の早期化が可能となる。この変更には,オブザーバモデルに入力する実値としてクラッチ後の回転数が必要であり,後述するP軸回転数センサーを採用した。 以上はMT車について述べたが,AT車についても非線形要素に対処するためオブザーバモデルをトルクコンバーター後からタイヤまでのモデルとした。 れる挙動を再現するため,マウントモデルを追加し推定精度を向上した(Fig. 8)。 3.4 オブザーバ オブザーバモデルは,通常はシンプルなエンジンからFig. 7のようにクラッチ後からタイヤのモデルに変更すFig. 7 Improvement of the Observer Model マツダ技報 Engine~Tire No.36(2019) 目標をD/Sねじれ角にした理由は,振動の主要因がD/Sのねじれ一次共振のためねじれ角をコントロールできれば振動を抑制できると考えたからである。この制御をモデルベースで構築することで,派生車種などへの対応の際も,D/Sねじれ角を管理指標として制御することで車両諸元値の変更のみで制御可能となる。 目標D/Sねじれ角制御の制御系はFig. 5のように構成しており,実D/Sねじれ角を目標D/Sねじれ角に応答良く追従させるため,フィードフォワード(以下F/F)制御は駆動系システム特性の逆モデルを使用する。また,F/F制御に用いるモデルのモデル化誤差や外乱による実D/Sねじれ角のズレを補正するためフィードバック(以下F/B)制御を併用する。F/Bに用いる実D/Sねじれ角は,オブザーバにより推定する。オブザーバとは,直接計測できないパラメーターの値を推定するために,他の計測可能なパラメーターの値を代入してシステムの作動を模擬するものである。 この制御系ではモデル化誤差を補正するF/Bが重要であるため,F/Bに用いる実D/Sねじれ角の推定精度が非常に重要となる。Powertrain Control Module(以下,いて推定精度を確保した領域を広げるには駆動系の非線形領域への対処が課題となる(Fig. 6)。以下で今回の対処の内容を説明する。

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