マツダ技報 2019 No.36
26/321

Fig.4 Relation between Temperature and Specific Heat -17- ① 燃料に対する空気の比率を高めて燃やすリーン燃焼にすると比熱比は高まり,同時に燃焼温度低下でも② 更に燃焼温度が低下すると,ガス温と壁温の差が小さくなることによって熱移動量が小さくなり冷却損③ リーン燃焼ではλ=1運転に比べて,同一トルク点での吸入空気量が大きいため,スロットルによる絞 2. SKYACTIV-Xのねらい Fig. 1 Roadmap to Goal of ICE 2.1 比熱比改善のためのリーン燃焼について オットーサイクルの理論式であらわされるように,熱効Fig. 2 Further Thermal Efficiency Improvement Fig. 3に示す左が従来の燃焼で,右がリーン燃焼を表しFig. 3 Concept of Lean Combustion Ratio NOxの発生は抑えられると同時に熱効率は大きく改善する。 また,Fig. 4に示すように,燃焼温度が低いほうが,比熱比は上がる。温度が高いと分子が移動したり,分子が分解するのにエネルギーを取られるため,温度を低くした方が比熱比は上がるのである。燃料に対したくさんの空気やガスを入れて燃焼させると,結果的に温度が下がるため比熱比が上がることになる。 わずかなリーン燃焼では燃焼温度が高くなり,NOxの発生も多くなるが,通常の火炎伝ぱ燃焼ではまともに燃えないぐらい大幅なリーン燃焼を行えば燃焼温度は下がり,リーン燃焼の効能をまとめると以下のようになる。 比熱比は高まる。 失が低減する。 り損失(ポンプ損失)が低減する。 このように相乗効果で熱効率が飛躍的に向上する。 マツダ技報 No.36(2019) 率向上の視点は圧縮比と比熱比である(Fig. 2)。右のグラフは圧縮比・比熱の変化と熱効率の関係を表すが,比熱比を高くすることで熱効率が大きく改善することが分かる。 比熱比向上は同じ燃料に対して空気量を増やすリーン燃焼によって実現できる。リーン燃焼によって何故熱効率が上がるのか,メカニズムを簡単に説明する。 ている。従来の燃焼は燃料と空気中の酸素が反応して,火炎が伝ぱしながら燃え広がる燃焼方式で,燃えながら広がるので燃焼のエネルギーは,熱とピストンを押し下げる仕事に変わる。それに対してリーン燃焼は,同じ量の燃料に空気を多く押し込むため,N2やO2といった動きやすい2原子分子が,従来よりも相対的に多く使われるようになるために,燃焼エネルギーの圧力への変換率が増す。その結果, 同じ量の燃料を燃やした際の圧力上昇率が高くなり,取り出せる仕事量が増えることで熱効率が高くなる。

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る