マツダ技報 2019 No.36
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5.施策の効果 6.おわりに -257- (Fig. 7)に対して,電線径を修正すれば再計算できるFig. 8 New Electric System Development Process Fig. 7 Verification Output File ハーネス設計部門間でのエレキシステムが ハーネス設計部門間でのエレキシステム図の内容に関わる不明点件数と問合せ確認工数は減少。ハーネス設計での転記工数は不要になるとともに,試作車両製作時の回路不具合は従来から半減した。また,車一台の回路モデルと回路検証のプロセスを構築できたことで,主要ユニットの数と配置違いによるコスト及び質量の机上計算を容易に繰り返すことを可能とし,回路検証における最適仕様算出工数を最小限に抑えることができた。 今回の取り組みは,理想のコモンアーキテクチャー開発に向けた最初のステップである。次のステップでは,車一台を俯瞰できる電気回路モデルを活用し,検証の領域を定常から時間軸を加えた領域に拡大させていく。最4.5 モデルによる回路検証プロセスの構築 カラクリの解明が既にできている電気回路の定常領域Fig. 6 Electrical Performance Verification Process マツダ技報 Directly(Link) No.36(2019) に限定し,モデルを活用した回路検証プロセスを構築した(Fig. 6)。その一例としてエレキ部品の電圧検証を紹介する。 電圧検証の目的は,エレキ部品に必要な電圧レベルを設定した電線仕様で保証できるか確認することである。エレキ部品への印加電圧は以下の計算式で表される。 「エレキ部品の電圧=電源電圧-電線電圧降下」 また,この式は以下のように展開できる。 「エレキ部品の電圧=電源電圧-(電線に流れる電流値×(電線長×単位長さあたり電線抵抗値))」 単位長さあたりの電線抵抗値は,エレキ部品に接続される電線仕様(電線種,電線径,端子サイズ)により異なる。この計算式を解くために,車一台の回路モデルが保有している電線接続,電線仕様,電線長,電線に流れる電流値の情報を活用し,上記計算式が組み込まれた検証ツールにデータをインポートすることで電線仕様の妥当性を判定している。 なお,検証ツールから出力される検証結果のファイル機能も持たせている。 新世代商品群のリードビークル開発から,全社レベルで新たなエレキ開発プロセスを導入して開発をスタートした。上流工程では,エレキ部品の最新情報が,時間差なく関係のあるエレキシステム図へ反映でき,役割分担も明確になったため,作成/反映の作業効率が向上した。さらに,下流工程はシステム図をそのまま取り込み,車に実装する物理単位となる電線に直接変換することで,人の手による介入を極小化した一気通貫のハーネス設計が可能となった(Fig. 8)。その結果,システム設計部門と

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