マツダ技報 2019 No.36
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-18- Change in Combustion Ratio Fig. 6 Comparison between SI and CI Combustion (1) まず成立範囲(回転・負荷)が狭いことである。 Fig. 7はエンジン筒内の温度を変化させた時の熱発生位Fig. 7 Relation between Cylinder Temperature and (2) HCCIは成立範囲が狭いがゆえに,Fig. 8に示すようれたが,理論空燃比の1.5倍程度でしかなかったため,燃費改善効果はそれほど大きくはなかった。Fig. 5に示すように,NOxの発生を抑えつつ比熱比を大きく設定できるのは,理論空燃比の2倍以上,空燃比で30以上の設定が必要である。 しかし,このレベルの空燃比となると火炎伝ぱ燃焼では燃焼速度低下によって燃焼安定性を悪化させる。 燃費と燃焼安定性のトレードオフの関係をブレークスルーするためには,燃えにくい薄い空燃比でも安定して短時間に燃焼を完結させる手段が必要となり,そのための有効な手段が,火炎伝ぱに依らず温度と圧力で燃焼反応を起こす圧縮着火である。圧縮着火でなら飛躍的な熱効率向上が図れるだけのリーン燃焼が可能となっているところを生しない理論空燃比の2倍近い空燃比では火炎が燃え広がらないが,圧縮着火(以下CI)では燃焼できることが分かる。 方式であるが,これをガソリンに適用したものがいわゆる式である。 この燃焼は,ガソリンと空気を完全に混ぜて,圧縮により上昇した温度と圧力で着火させるという方式であり,火花点火では燃えないような薄い混合気,つまりリーンな状態でも,綺麗にすばやく燃焼することで熱効率の向上と2.2 リーン燃焼の課題 火花点火を用いるリーンバーンエンジンも過去商品化さFig. 5 Relation between Air Fuel Ratio and Specific Heat Fig. 6に示す。火花点火(以下SI)燃焼ではNOxがほぼ発CI(圧縮着火)はディーゼルエンジンで採用される燃焼HCCI(予混合(燃料)圧縮着火)と呼ばれている燃焼方NOx発生量が少なくなるという利点を持っている。 マツダ技報 一方,HCCI燃焼には大きな課題がある。 置を調べたものである。熱発生位置が早すぎると燃焼騒音が悪化し,遅すぎると燃焼安定性が悪化する。燃焼安定性と燃焼騒音を満足できる温度の範囲が非常に狭いことが分かる。温度と圧力を高めることで圧縮着火は可能となるが, 燃焼安定性と燃焼騒音を満足させる要求温度範囲の3℃以内に制御することは非常に難しい。 な従来のSI燃焼との併用が必要となるが,HCCIの可燃範囲は外気温度,気圧など大気状態の変化や燃料オクタン価No.36(2019)

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