マツダ技報 2019 No.36
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社, 1990. -263- 3. 統一感のある音創り要件 4. 部品の機能統合 5. おわりに 参考文献 Fig. 5 Construction of Information Transfer Sound System (1) 世良:サイン音の緊急感のレベルを制御するために必(2) 茂木ほか:脳活動計測に基づく情報音の音像定位による方向認知支援,自動車技術会論文集,46巻6号,pp.1093-1098,2015 (3) 飯田ほか:空間音響学,東京,コロナ社,2010 (4) 田口:自動車内のサイン音の音響特性と高級感、快適(5) 城戸:音響工学講座(1) 基礎音響工学,東京,コロナを特定する機能をもたせるためである。また,発音制御のコントロールユニットは1つに統合した。 新型MAZDA3の情報伝達音は,コクピットHMIの進化を目指し,認知プロセスにおいて不必要に注意資源を費やさない認知インターフェースの実現を目指して開発した。人間特性に基づき情報伝達シーンでの聴覚刺激の機能を再検討し,音に付加する情報の最適化と,その機能を有効に果たす制御因子を特定し,それをコントロールした音創りを行った。機能性だけでなくコクピット空間での統一感もねらった音創りにより,商品性も進化したと自負している。 今後も継続的な進化を目指し,取り組む所存である。 要な音響特性の検討,九州大学修士論文, 2016. 感、警報感の対応関係. 九州大学修士論文, 2007 マツダ技報 No.36(2019) たすための音創りの制御因子は,音の長さ・発音周期・音階や音圧変化が主因子である。 このシーンの対象音は,受付音・拒否音・終了音・ウインカー音・リバース音・音声認識の発話開始音・電話着信音などの10種類の事象である。受付であれば短音や音階上昇音,終了は長音や音階下降音,拒否は否定感のある低い不協和音や短音の2~3回繰り返し音,ウインカーはカッチカッチを表現する短い繰り返し音など,各事象に対して音をイメージできる。これは,2.1 (2)で述べたようにクルマや家電,携帯電話など生活環境の中でメンタルモデルが形成されているためである。 従来車では,受付音や拒否音,ウインカー音など単一周波数でも音の長さと発音周期の制御でメンタルモデルに近い音創りができていたが,新型MAZDA3ではコクピット内の全ての音を対象にしたことから電話着信音などの新たな表現が必要となり,これらのメンタルモデルに合致させるためには,従来からの音の長さと発音周期の制御に加え,音階や音圧の時間軸での制御も必要と判断した。 従来,単一周波数音で表現していたウインカー音なども音階や音圧変化の制御を加えたことで,事象を特定する機能性をより高め,更に,複合音を活用した音創りにより落ち着き感のある音表現など商品性も高めることができた。 新型MAZDA3では,2.で述べた機能性の追求に加え,コクピット空間との統一感も目指した音創りを行った。 具体的には,マツダが目指すブランド表現のキーワードを上げ,それらがどういった音の表現要素につながるか,シンプルなメロディーを複数の楽器で奏で比較評価しながら特定する検討を行った。特定した要素は音創りのベース要件とし,緊急性の高い音源以外の全てに適用することで,統一感をもたせた。緊急性が高い音源は,2.2 (1) 2)で述べたように音の違いを区別しやすい音創りの要件として倍音構造(音色)を制御する必要があるため,機能音の要件を優先することとした。 新型MAZDA3は,音の種類数削減などの人間特性からの機能統合と合わせて,部品の機能統合も行った。従来車と新型MAZDA3の情報伝達音システム構成の違いをFig. 5に示す。 従来車はメーター内のブザー以外にシステム固有のブザーが存在し,車室内では最大で5つの発音体を設定していた。また,発音制御するコントロールユニットも複数存在していた。新型MAZDA3では,倍音構造とスペクトル重心を制御するために広帯域の音創りが可能なスピーカーを発音体とし,車両の前後2か所に情報伝達音の専用スピーカーを設定した。2か所に設定したのは,2.1 (1) 3)で述べた方向

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