マツダ技報 2019 No.36
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(Thermal ignition) -266- (Thermal ignition)と定義し,計算開始から自着火時 2.2 定義 本研究では,Fig. 1に示すとおり計算開始からOHラジ2. 計算条件 Fig. 1 Definition of LTO, H2O2-loop and HTO Dominant Fig. 2 Definition of Ignition Delay and Combustion 3.1 着火遅れ時間への水添加とEGRガス添加の影響 希釈なし(以下Base),水添加,EGRガス添加の着火700K以上において H2O/ EGRが1以下となっていることから,水添加がEGRガス添加に対して着火遅れ時間が短くPeriod Period の物理的冷却効果(潜熱・顕熱)に着目した報告が多く,水添加が高温高圧場での自着火・燃焼に与える化学的影響やEGRガス添加との差異等,明らかになっていない点が多い(10)。本研究では,水添加が自着火・燃焼の化学反応に与える影響について,冷却効果以外の化学的特性に着目し,EGRガス添加による効果との差異を明らかにすることを目的とした。 て,EGRガス添加との差異を明らかにするため,化学反応速度論に基づく計算解析を実施した。計算解析は,施した。なお,2207化学種,10289素反応式をもつ反応機構を使用した。計算条件を表1に示す。標準燃料体積割合と定義し,本研究では水添加,EGRガス添加ともに希釈率10%とした。なお,水は計算開始時期において水蒸気として存在するものとした。EGRガス組成は,した。 カル濃度が第一ピークを迎えるまでの期間を低温酸化反応支配期間,OHラジカル濃度の第一ピークからH2O2濃度ピークまでの期間をH2O2ループ支配期間,H2O2濃度ピークから熱発生量が最大となるまでの期間を高温酸化反応支配期間と定義した。 義を示す。H2O2ループ支配期間終了時期を自着火時期2.1 計算条件 水添加が自着火・燃焼の化学反応に与える影響についANSYS社製CHEMKIN-PROのClosed Homogeneous Batch Reactor modelを用い,定容かつ断熱条件として実(PRF90)を供試燃料として用い,初期温度は600K~1000Kの範囲,当量比 は0.4~2.0の範囲で計算を実施した。また,希釈率を全ガスに対する水またはEGRガスのCooled-EGRを想定して当量比によらずN2:CO2=79:21とFig. 2に本研究における着火遅れ時間,燃焼期間の定Table 1 Calculation Condition 期までの期間を着火遅れ時間( )とする。各計算における熱発生量の最大値を総発熱量とし,自着火から総発熱量の90%に至るまでの期間を燃焼期間( comb)とする。 遅れ時間をそれぞれ Base,  H2O,  EGRとする。Fig. 3,4に,初期温度,当量比に対する水添加またはEGRガス添加の着火遅れ時間のBaseに対する割合( H2O/ Base,  EGR/ Base)を示す。またFig. 5に H2O/ EGRを示す。Fig. 3,4から,水添加,EGRガス添加のいずれの条件においても,当量比,初期温度によらず H2O/ Base, EGR/ Baseは1以上であり,このことはBaseに比べ着火遅れ時間は長くなっていることを示している。これは,希釈による酸素,燃料濃度低下によるものと考えられる。Fig. 5から,なっていることが分かる。この温度域では,着火遅れ時間に対してH2O2ループ支配期間の割合が大きいため(11),マツダ技報 3. 結果・考察 No.36(2019)

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