マツダ技報 2019 No.36
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eaR rewsnA rcerroC-273- の3ケースで検証した。どの場合も正解率が目標の100% 2.2 寄与分析手法の問題点の解決手法 2.1節で説明した影響のある変数を選択できない問題の t 𝐷2. 部品影響度を明らかにする技術 Case1(p<0.05)Case2(p<0.03)Case3(p<0.02)+𝑒 影響度と定義している。ここで重要となるのが,式(1)の応答値y に影響のある設計変数のみを選択し,重回帰分析で影響度 β を導出することである。影響のある変数のみを選択する手法としてはステップワイズ法が広く用いられている。ステップワイズ法は,設計変数を取り入れたり,取り除いたりしながら,ある評価指標を満足するか否かを判定し有意な関数式を求める手法である。評価指標には,各変数にかかる偏回帰係数β の信頼度(変数の影響度の有無の判断に使える指標)を表すp値が用いられる。しかし,p値の閾値によって選択される変数が変化するため,影響のある変数のみを選択できないという問題がある。 ている関数式(影響のある変数30と影響のない変数10を組み合わせた式)で,p値の閾値を変化させた時の選択される設計変数を正解率として検証した結果である。閾値は,一般的に偏回帰係数の信頼度の判別に用いられるに達しておらず,影響のある変数を選択できていないことが分かる。よって,閾値により制約(上限)を設け変数選択を行う従来手法では,影響のある変数を全て選択することができないリスクを抱えており,設計者が誤った意思決定・判断をする可能性がある。 要因は,選択される変数によって変化するp値に対し最適な閾値を決定できないことである。本要因については,近年,アメリカ統計学会でも問題提起されており(3),閾値に依らない変数選択手法が必要である。 そこで,閾値を変数の選択の指標に用いず,選択された変数の偏回帰係数のp値の総和を求め,そのp値の平均値が最小となる,変数組み合わせを最適化手法で選択し,重回帰分析する寄与分析手法を開発した(Fig. 3)。これによって,選択された変数全ての信頼度が高い関数式を求めることが可能になる。なお,重回帰分析で用いるFig. 2は,ステップワイズ法について,正解の分かっ0.05未満と,より閾値を厳しくした0.03未満,0.02未満100%75%50%25%0%Fig. 2 Correct Answer Rate of Methods マツダ技報 𝑗=1Target Setting Vehicle Performance & Requirements Crashworthiness Vehicle Dynamics (Body Stiffness) NVH Durability NG Release of Drawing Mass Production Fig. 1 Flow of Vehicle Performance Development 2.1 従来の寄与分析手法の問題点 本手法の特徴は,性能と各設計変数との関係を関数式y は商品性能の応答値,x は設計変数,β は偏回帰係数,𝑒 は残差である。本論文では,この偏回帰係数 β をDesign Productivity Packaging MDO Mass/Cost Target OK (1) No. 36(2019) 商品性能を満足する構造仕様が決まったとしても,MDOで考慮していない要件で性能を満足しない場合,MDOの結果をそのまま図面に反映することができなかった。 そこで,設計者がデザインなどの他要件を含め構造検討ができるようにするため,最適仕様の結果を示すのではなく,性能に影響のある設計変数のみを抽出し,各変数の性能に対する影響度合いを定量化する設計支援技術を考案した。また,設計者が軽量化や商品性能間のトレードオフ関係を考慮しながら直観的に構造発想できる可視化方法も取り入れた。本論文では,本手法の概要と商品開発での適用事例について報告する。 で表現し,設計変数にかかる偏回帰係数を性能に対する設計変数の影響度として定義することにある。これは,性能は設計変数の仕事により成り立っていることから,各設計変数の仕事の足し合わせで性能を表現できると考えたためである。影響度を計算する一般的な統計手法の一つとして,式(1)に示すような関数を考える重回帰分析がある。 𝑦=𝛽0+∑𝛽𝑗𝑥𝑗

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