マツダ技報 2019 No.36
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-20- Fig. 12 Controlled Compression Ignition Combustion over Wide Range of Operating Conditions (1) 常に安定した火種を作る Fig. 13 Concept of Air-Fuel Mixture Control (2) プリイグ・異常燃焼制御 Fig. 14 Higher Pressure and Split Fuel Injection Strategy (3) 燃焼状態監視制御 Fig. 15 Concept of Combustion Monitoring Control スパークプラグを制御因子とした圧縮着火を行うにあたって,以下の課題のブレークスルーが必要となった。 常に安定した火種を作るためには点火時期での混合気の分布の制御が必要であった。CCIに必要な膨張火炎球生成に要求される,点火時の混合気濃度分布をFig. 13にしめす。 全体はCI燃焼のためのリーンな混合気を分布させた上で, プラグ周辺にのみ火花点火可能で,しかもNOxが激しく発生しない程度の濃度の混合気を燃料噴射の工夫と流動の組合せで実現した。点火時期と噴射時期の同期制御を可能にした結果,安定した火花点火~安定燃焼を実現できた。 従来高圧縮比エンジンでは負荷を上げるために空気量を増やすと圧縮端圧力が高くなり自着火しやすくなるためにプリイグという現象が発生しやすくなる。この現象は, 高圧縮比でかつ予混合がゆえに生じていた課題である。この課題に対しては,Fig. 14に示すように圧縮行程での燃料噴射で着火遅れ時間を制御することで対応した。具体的には分割噴射を採用し,負荷増大に合わせて圧縮行程噴射の割合を増やし,未燃混合気が圧縮される時間を最小化することでプリイグを回避させた。更に圧縮行程で噴射するとプリイグは回避できるが,燃料と空気が混ざる時間が少なくなるので煤が出やすくなるという新たな問題が出る。この課題の解決のために,超高燃圧の燃料噴射システムと燃焼室中心に配置された小径多噴孔をもつ燃料噴射弁を開発した。超高圧噴射は,微粒化を促し,気化霧化を促進することに加えて,エンドゾーンまで活用した燃料配置の最適化を実現した。また,SPCCIでは火炎伝ぱによる圧縮効果を利用することで,筒内温度・圧力制御のための圧縮比依存度を下げ,圧縮比を適正化できたことも異常燃焼の抑制に有効に作用している。 前述した異常燃焼の回避技術に加え,それら制御が正しい燃焼を導いていることを常に答え合せをする,つまり意図と結果のずれをリアルタイムに補正し,常にありたい燃焼とするために,筒内圧センサーによる監視制御を実行している。吸気温度の変化に対し,点火時期を制御することにより目標の燃焼状態に制御可能であることをFig. 15に示す。 マツダ技報 No.36(2019)

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