マツダ技報 2019 No.36
290/321

-281- 4.3 薄膜積層材料の界面状態及び構造分析結果 リチウムイオン電池電極材用の活物質は直径数十ナノ (3) ンBL24XUで行った。 𝑛𝐵×𝜎𝐵×𝜆𝐴𝑛𝐴×𝜎𝐴×𝜆𝐴𝐼𝐴𝐼𝐵 =]𝐴×cos𝜃)𝐵×cos𝜃)𝐴×{1−𝑒𝑥𝑝[−𝑑⁄(𝜆𝐴𝐵×𝑒𝑥𝑝[−𝑑⁄(𝜆𝐴4. 自動車用薄膜材料の界面・積層構造分析 Measurement Fig. 10 Laminated Structures of Samples Fig. 11 HAXPES Spectra of Three-Layer Sample ルについて,検出した運動エネルギーをBinding Energy(束縛エネルギー)に変換してFig. 11に示す。SiのスペクトルではSi-Si結合に由来するピークとSi-O結合に由来するピークが確認される。Si-Si結合はSi基板,Si-OはSi基板表面に存在する酸化被膜からのシグナルである。Ti1sとAl1sのスペクトルではそれぞれ1つのピークが確認され,出現エネルギー位置から各元素が酸素と結合した状態であると判断できる。 次に各層の厚さを定量評価するため,試料を検出器に対して傾斜させながらスペクトルを取得する角度分解測定を行い,式(3)を用いて解析を行った。 ここで,n:原子密度,:光イオン化断面積(2)(3),d:薄膜の厚さ,:試料の傾斜角,ABはBから放出された光電子の膜A中における非弾性平均自由行程(4)(5)である。なお,三層構造試料については,解析対象の層に対して上に存在する層による光電子の減衰を考慮するように式(3)を修正した。解析により得られた薄膜厚さをTable 3に示す。作製厚さ(触針式段差計で測定 ±20%の誤差をもつ)に対して,十分に構造を推定できる結果が得られることが分かる。 4.1 自動車用薄膜材料について 材料表面への薄膜形成は,新しい機能や特性の付与,耐4.2 硬X線光電子分光分析技術について 硬X線光電子分光(HAXPES:Hard X-ray Photoemission Spectroscopy)分析は,硬X線(高いエネルギーをもつXHAXPES法の概要をFig. 9に示す。 Fig. 9 Schematic Representation of HAXPES マツダ技報 ]}No.36(2019) 本結果のように,キーとなる元素をX線吸収分光分析することにより,材料中での化学反応を定量的に評価することが可能である。X線吸収分光法は,ゴム材料をはじめとして,リチウムイオン電池電極材,排ガス浄化触媒,金属材料を中心に化学状態変化の分析に適用している。 久性向上に有効であり,求められる機能と特性により,原子・分子スケールから数百マイクロメートルスケールの薄膜が多様な自動車用材料でも適用されている。自動車用機能材料として重要なリチウムイオン電池電極材や排ガス浄化触媒では,ナノメートルスケールで薄膜の厚さ,組成,薄膜と基材の結合界面,または積層した複数薄膜間の界面・構造をコントロールすることが求められる。このような薄膜構造を定量化可能とするため,硬X線光電子分光分析を用いて,リチウムイオン電池電極材用活物質の薄膜コーティングを想定した金属酸化物の薄膜積層体の界面・構造を評価した結果を紹介する。 線)をエネルギー一定の条件で試料に照射し,試料から発生する光電子の運動エネルギーとその量を計測することで,物質の化学状態(電子状態)を評価する手法である。メートルから数マイクロメートルの粒子であり,この粒子表面には出力性能向上や長寿命化などの目的に応じて薄膜コーティングが施されている。この活物質の表面状態を模して,Fig. 10に示す簡素化した構造の薄膜積層体を作製して分析用試料とした。実験はSPring-8の兵庫県ビームライ三層構造試料(Fig. 10-c)のSi1s,Ti1s,Al1sスペクト

元のページ  ../index.html#290

このブックを見る