マツダ技報 2019 No.36
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-21- ① Layer1:SI燃焼。極冷間や高地の条件で使うほか,システムに異常が起こった時に,安定した運転ができ② Layer2:大量のEGRを導入したG/FリーンSPCCI燃焼。外部,内部EGRを用いて低燃費を実現。冷間時,4. SPCCIの制御 5. SPCCI燃焼の活用拡大 Fig. 17 Control for Combustion Modes (Intake air and combustion chamber wall temperatures) 5.1 SPCCI燃焼へ移行するための早期暖気の概要(1) SKYACTIV-Xの熱マネージメントは,従来よりも少な(1) 水流制御 SPCCI燃焼は,筒内の温度を一定値以上に高めなければ(2) エンジンカプセル化 SPCCIとは,単に火花点火で圧縮着火をアシストするだSKYACTIV-Xでは3つの基本となる燃焼モード(Layer)③ Layer3:EGRの少ない,A/F30を超えるA/FリーンSPCCI燃焼。軽負荷領域を大A/Fで低燃費を実現。 Fig. 16にエンジン回転,負荷に対する各燃焼モードA/FリーンSPCCI燃焼モードを運転中に成立条件から外Fig. 16 Control for Combustion Modes (Engine Speed and Engine Load) く限られた熱エネルギーをいかに有効に活用するかをコンセプトに開発した。 ならない。一晩駐車した後の走行時等は,局所的に温度を高め,エンジン全体の構造体や冷却水及び潤滑油に熱が拡散しないようにしている。具体的には,燃焼時の発熱量が冷却水を介して循環され,各部へ拡散していく為,始動後の発熱量と構造体の熱容量を元に,燃焼室周りの壁温を予測し,信頼性や快適性(暖房性)から許容できる数分間は冷却水の流れを止め,筒内の暖機を向上させている。また,冷却水を流し始めても,発熱量と放熱量のバランスを確認しながら,SPCCI燃焼が実現できる状態を維持すべく冷却水の流量を,流調弁を用いて制御し,燃焼室の入口と出口の水温をモニターし筒内を適温に保っている。燃焼室周りの水温の上昇を大幅に早め,燃焼効率の高い状態へ早期に移行できる様に水流を制御している。 エンジン燃焼室温度を適温に保ち,かつ燃焼音に寛容なエンジン環境を整えることで,SPCCI燃焼頻度を上げる技術としてエンジンカプセル化を採用している。 エンジンカプセルは,Fig. 18に示すようにカプセルカバー,エンジン直貼り,アクティブエアーシャッター,アンダーカバー,スプラッシュシールドで構成され,エンジン周りにホットゾーン空間を形成し,エンジンの熱を逃がさず,温かい空気を溜め,かつエンジンから放射される音を吸音する機能を適正機能配分で実現している。 マツダ技報 No.36(2019) 以上のような取り組みにより,圧縮着火領域を全負荷領域まで拡大できた。 けではなく,筒内温度/圧力,更には燃料噴射による混合気分布濃度/EGRの制御を含む,総合的な燃焼制御技術である。この完全に制御された圧縮着火,火花点火を実現したのがマツダ独自の燃焼方式SPCCIで,圧縮着火燃焼を火花点火で制御した燃焼である。 を設定している。 るモードとして使用する。 及び中負荷領域に適用。 各燃焼モードは成立条件がそれぞれ異なるために,実際の使い方においてはエンジン回転,負荷,さまざまな環境条件(温度,気圧,etc)に対して燃焼モードを切り替えるように制御している。 の領域を,またFig. 17に吸気温度や燃焼室壁面温度の変化に対しての各燃焼モードの制御を示す。 れると,G/FリーンSPCCI燃焼モード,SI燃焼モードに切り替える制御を行う。

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