マツダ技報 2019 No.36
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-33- Fig. 3 Function of Temp. for Engine Fig. 1に示すとおり,①暖機後に燃費のよくなる適温を下SKYACTIV-Xの実力を最大限に発揮させ,いかなる環境Fig. 1 Concept of Thermal Management Table 1 Function to Improve and Action の温度を一定値以上に高めなければならない。このため,一晩駐車した後等,エンジンが冷えた状態で走行する場合は,早期に筒内温度を高めることが重要となる。ここでは,暖機時局所的に温度を高め,エンジン全体の構造体や水温及び油温に熱が拡散しないための水流制御について説明する。具体的には,Fig. 2のイメージ図のように,エンジン始動後に燃焼時の発熱量は,冷却水等を介して循環され,各部へ拡散していくため,始動後の発熱量と構造体の熱容量を元に,燃焼室周りの壁温を予測し,信頼性や快適性(暖房性)から許容できる止水許容時間を試算しながら,冷却水の流れを止めて,筒内の暖機を優先させている。 また,冷却水を流し始めても,発熱量と放熱量のバランスを確認しながら,SPCCI燃焼が実現できる状態を維持すべく,Fig. 3に示す各ディバイス(冷却水切替バルブ(CSV)や電子制御サーモスタットやアクティブエアシャッター(以下AAS)等)のシステムをエンジンの出入り口水温を計測し,筒内の壁温を予測しながら制御することで,冷却水の流量をコントロールし,筒内の温度を適温に保って いる。 2.1 水流制御 SKYACTIV-Xから採用されているSPCCI燃焼は,筒内Fig. 2 Image of Reduction of the Heat Conduction マツダ技報 2. 適温までに短時間で上昇(暖機の早期化) No.36(2019) 技術には求められている。加えて,G/FリーンSPCCI燃焼も,従来のエンジンに比べると燃焼効率が良くなっており,暖機に使える熱エネルギーが少なく,限られた熱エネルギーをいかに有効に活用するかが,重要なポイントとなる。この章では,安定してA/FリーンSPCCI燃焼を実現させるために,限られた熱エネルギーをマネージメントする技術について,詳しく説明していく。取り組み技術としては,げ,②その適温までのエンジン各部の温度や油水温を短時間で上昇させ,③エンジン停止後の温度低下(放熱)を抑制させ,④駐車後の再始動時のエンジン各部の温度を従来よりも高い状態から運転できるようにすることを目指している。具体的な取り組み方針は,Table 1に示すように,必要エネルギーの最小化や熱エネルギーの分配の適正化及び熱エネルギーの保存という視点で,開発している。具体的な内容は,後述していくが,①の対応として低粘度オイル,②の対応として水流制御や可変吸気システム及び空調協調制御,③&④の対応としてカプセル化を織り込んでいる。 この熱マネ技術によって,新型MAZDA3に搭載された下で,お客様が思いどおりに運転いただいても,実際の燃費性能は大幅に改善されていることを体験していただける状態を実現させている。

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