マツダ技報 2019 No.36
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-35- 3. 停止後の温度下降ゲインを減らす(保温) Fig. 7 Part of Fresh Air Duct 2.4 空調性能との協調対応 お客様が快適に運転していただくためには,車室内の快3.1 エンジンカプセル化 エンジンの筒内温度を適温に保ち,かつ燃焼刺激音に寛に蓋をすると蓋なしよりも,お湯が冷めにくくなることと同じ原理である。 カプセル化は,カプセルカバー,エンジン直貼り,AAS,アンダーカバー,スプラッシュシールドで構成され,エンジン周りにホットゾーン空間を形成し,エンジンの熱を逃がさず,温かい空気を溜め,かつエンジンから放射される音も吸音する機能を適正機能配分で実現させている。 発に適用する筒内壁温予測技術,マツダ技報,No.35,p.2 エンジンルーム内の自然対流を考慮したエンジン本体内の伝熱解析モデルを活用し,Fig. 9やFig. 10に示すように,各部品に保温機能を配分させて対応している。 Fig. 8 Image of Heat Convectional Model 2018年版のマツダ技報内の山本らの「高熱効率燃焼の開(2018)」でも紹介されているFig. 8のようなソーク中のFig. 9 Function Distribution for Encapsulation Fig. 10 Concept of the Encapsulation マツダ技報 No.36(2019) 適性は重要である。快適性を最少のエネルギーで実現し,早期暖機にエネルギーを使えるようにすることにも,取り組んでいる。まず,冬場の運転時は,暖房性能が必要となるため,エンジンの発熱量をエバポレータという熱交換器を通して,室内に熱を供給している。これは,冬場の早期暖機にとっては大きな外乱である。このため,暖房使用時の必要熱量を減らすことで,エンジンの暖機性は改善される。今回,冬場に車室内に乗り込んだお客様が,暖房の効きを人として感じるまでの時間とヒーター回路に通水するタイミングを合わせることで,暖房要求があっても,エンジン内の水温がお客様に温かさを感じてもらえるまで上昇してからヒーター回路に通水を始めて,エンジンの暖機と快適性を両立させている。これには,前述したヒーター回路への通水量コントロールだけでなく,前モデルのハーフタイプから今回のフルタイプに変更したAASも活用している。フルタイプのAASは,ラジエター前に設置された可動式のフラッパー構造となっており,全閉にすることで冬場の走行中の冷たい走行風が,エンジンルーム内へ流入するのを抑え,エンジン構造体や配管等からの放熱を抑制させることにつなげている。更に加えて,後述のカプセル化技術による再始動時のエンジン水温を高くすることでの昇温の早期化と合わせ,車両全体での熱を無駄にしない取り組みが空調性能との両立に貢献している。 容なエンジン環境を整えることで,SPCCI燃焼頻度を上げる技術としてエンジンルーム内のカプセル化を採用している。 この技術は,NVH性能の改善にも貢献しているが,詳細は本誌,神田らの「SKYACTIV-X NVH技術」の稿で述べているので,ここでは,熱マネ領域でのカプセル化技術のねらいを説明する。効果が得られるシーンとしては,車をお客様が走行した後に,エンジンを停めて,駐車中における構造体や油水温の外気温相当まで低下する時間を,従来よりも長くすることである。イメージしやすい事例で説明すると,浴槽に溜めたお湯を冷めにくくするために,浴槽

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