マツダ技報 2019 No.36
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(a) Jet Height 30mm (b) Jet Height 20mm -46- Jet Height Measured Results Previous Simulated Results Present Simulated Results Results and Simulated Results Vortex Center Swirl 心位置を改善させることができた(Fig. 4(e),4(f))。 料液滴の微粒化過程である。この過程には,Kelvin-自由噴霧写真やノズルから数十mm下流における平均液滴径からモデル係数を導き,SKYACTIV-Gの開発に適用してきた(2)(3)。しかしSKYACTIV-Xでは,圧縮行程後半の燃料噴射で燃焼を制御するため,ノズルからピストンまでの距離が短くなり,ノズル近傍の噴霧挙動を考慮してモデル係数を導く必要がある。そこで,産業技術総合研究所との共同研究で,ノズル近傍の微粒化特性・ダイナミクスについて研究している(4)。 本研究では,大型放射光施設SPring-8の高輝度X線を 噴霧に照射し(Fig. 5),噴射圧力20MPa,40MPa,について,ノズル近傍の液滴速度・径を計測した。雰囲気密度2kg/m3の計測結果をFig. 6に示す。噴射圧力に依らず,ノズル近傍のSauter Mean Diameter(以下,SMD)はノズル径およそ100μmよりも小さくなっており,ノズル近傍でも微粒化が進行していることが分かった。加えて,噴霧軸上の液滴速度をノズル位置の液滴速度で正規化した相対(a) -260deg.aTDC (b) -128deg.aTDC (c) -260deg.aTDC (d) -128deg.aTDC (e) -260deg.aTDC (f) -128deg.aTDC Fig. 4 Comparison of Incylinder Flow between Measured 3.3 噴霧予測技術 燃焼室内で混合気を形成する際,最も重要になるのは燃Helmholtz and Rayleigh-Taylor(KH-RT)モデルを用い,60MPa,雰囲気密度2kg/m3,10kg/m3,18kg/m3それぞれ30mm,流入速度20m/sの場合,衝突部によどみ領域が形3(d)に示す。 Measured Results (c) Jet Height 30mm (d) Jet Height 20mm Simulated Results Fig. 3 Comparison of Impinging Flow between Measured Results and Simulated Results (以下,PIV)による可視化計測を行った。噴流部高さ成される(Fig. 3(a))が,この領域は流入速度の増加に伴い扁平になる。衝突角を変えると,よどみ領域の様子が変わる(Fig. 3(b))。これらの現象に比較的よい一致を見せる乱流モデルk-ε RNG・Smagorinskyそれぞれについて,最適格子サイズを導き,高精度化した。k-ε RNGは計算効率が求められる詳細設計開発に,Smagorinskyはノッキング・サイクル変動のような複雑現象を解明する場合に用いる。ここでは, Smagorinskyの計算結果を,Fig. 3(c),Inflow Velocity 実際の燃焼室内では,複雑形状・非定常流れをあわせもつため,定常流れが形成されることはない。そのため,前述の基礎流動には現れない現象が存在すると考える。そこで,単気筒可視化エンジンを用いてエンジン特有の現象を理解し,予測技術の検証・改善に取り組んだ。 回転速度2000rpm,スロットル全開で,吸気バルブを片弁駆動させることでスワール流を形成し,PIVによる可視化計測を行った。可視化結果では,吸気行程で流速70m/sを超える主流が形成される(Fig. 4(a))が,吸気バルブが閉まり,空気の流入が止まる圧縮行程においてもその一部が残存する(Fig. 4(b))。一方,計算結果では,圧縮行程において主流が流速40m/sまで減衰する(Fig. 4(c),4(d))。これは,乱流モデルで導かれる渦粘性が高いためと考えられる。前述の基礎流動は渦運動の影響が小さいが,燃焼室内流動は複雑形状や吸気流動の影響で渦運動の影響が大きいため,この問題が現れたと考える。そこで,乱流モデルの渦粘性係数を調整することで,スワール流の流速・渦中マツダ技報 No.36(2019)

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