マツダ技報 2019 No.36
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-54- 5.2 往復回転系 SPCCI燃焼では圧縮自着火によって従来燃焼に比べて急 5.3 燃料噴射系 SKYACTIV-X SKYACTIV-G Fig. 10 Piston Cavity Design 1. 強度確保:コンロッド小端のテーパー形状によりピン2. 振動騒音対策:SKYACTIV-Dで採用したNatural Sound Smoother を水平展開した。 3. 機械抵抗低減:筒内圧力増加による境界潤滑割合増加Fig. 11 SKYACTIV-X Piston (1)燃料噴射系の開発のねらい High-pressure fuel pump Pump tappet with sliding bearing Two lob cam with large curvature 1:1 gear ratio with crankshaft 1. 燃料の気化時間短縮 2. 燃料の高分散性 3. 高精度微小量,多段噴射 (2)超高燃圧噴射系 Typical Gasoline DI injector 激な筒内圧力上昇が発生するため,往復回転系部品はより高いレベルの強度確保と振動騒音対策が必要となる。これに対してSKYACTIV-Xでは,以下の技術を織り込むことで対応し,重量増加を最小限にとどめ,更に機械抵抗低減を実現することができた(Fig. 11)。 ボス間距離を短縮して発生モーメントを低減しつつ,燃焼室裏を大きく除肉することで軽量化に結び付けた。 に抑制するため,非対称バレル形状のオイルリング,TopリングへのDLC追加,各部摺動面の粗さ低減,高さ方向で楕円量を最適変化させたスカートプロファイルを採用して機械抵抗低減を実現した。 リーン混合気の均質性の向上や,圧縮工程噴射による低温酸化反応の抑制,成層化による着火性とリーン化の両立のため,以下をねらいとした超高燃圧,センター噴射,流量調整弁内蔵インジェクターを特徴とする燃料噴射系を開発した。 従来の直噴ガソリンエンジン燃料系の燃圧は30MPa程度であるが,倍以上の70MPaの燃圧を実現した。インジェクターの高燃圧化でまず課題になるのは開弁力の増大手段である。インジェクター閉弁時には,燃圧が芯弁を閉じる方向にかかるため開弁するにはこれに打ち勝つ開弁力が必要となるので,燃圧の70MPa化に伴い開弁力を増加しなければならない。開弁力は通常はコイルを大型化すれば電磁力は強くなるが,電磁力の増加,減少の応答時間が長くなり極短時間での開閉が困難になるため,上記の多段噴射の要求を満たせなくなる。それを解決するために,世界初の2段ソレノイドのインジェクターを開発し,開弁力と作動速度の両立を図った(Fig. 12)。 また高燃圧化のために,全ての燃料系部品を新規開発している。燃料ポンプは高燃圧化に伴いポンプ駆動荷重が増大する。これに対応するために,ポンプ駆動カムはクランク等速化によりカムを2山とし,ポンプタペットは従来のニードル軸受から滑り軸受に変更することで,それぞれ面圧を低減した(Fig. 13)。 マツダ技報 Dual solenoid Developed Gasoline DI injector Fig. 12 Injector Mechanism Fig. 13 Fuel Pump Drive System No.36(2019)

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