マツダ技報 2019 No.36
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-61- (Fig. 6)。 3. 制御システム 4. 吸排気制御―筒内状態の推定と制御 Fig. 5 Control System Components ためNOxの排出が課題となるが,SKYACTIV-Xでは,尿素の補充が必要なSCR(Selective Catalytic Reduction)などの後処理装置を用いず,SKYACTIV-Dと同様,燃焼そのものの制御によりクリーンな排出ガスを実現している。 燃焼によるNOxの生成量を決める主要因子は空燃比と燃焼温度である。空燃比をリーンにすれば燃焼温度の低下を通じ生成量を下げられるが,度を過ぎると燃焼の不安定化をともなう。エンジンの個体差や環境条件があるなかで,制御するため,NOxセンサーを採用し,筒内圧センサーと合わせてそれぞれモニタしフィードバックを行っている。 なお,空燃比が決まった後でも,燃焼温度や安定性が燃焼位相により変化するため,前述の自着火制御はA/Fリーン空燃比下においても実行されている。 三元触媒の機能する青のゾーンと,浄化の必要がない緑のゾーンのいずれかを運転条件により切り替え,中間を用いないことで,後処理の不要なリーン燃焼を実現している。 ンポーネントについて本稿で触れたものを中心にFig. 5に示した。 ドライバーの加減速要求の変化に素早く追従する必要があるため,特に過渡運転で吸気量やEGR率の変化を精度良く推定できることが重要である。 吸気システムはFig. 5のように,スロットル下流に,エアサプライのためのスーパーチャージャー(以下SC)を備える過給経路と,エアバイパスバルブを備えるバイパス経路の二つの経路をもつ。EGRはバイパス経路中に導入されている。 このような吸気系の構造は,インタークーラー下部へのEGRあり,SC停止のためガスがほぼ流れない過給経路はEGRなしの状態となる。この状態からSCクラッチをONすSC回転開始とともに過給経路のガスが吸気ポートへ導入さEGR挙動を精度よく推定できるようになった。結果例をFig. 7に示す。図中のCPLF(7.2節)はノッキングの指標Fig. 6 Schematic Illustration of Transient EGR マツダ技報 凝縮水堆積抑制やエンジン搭載レイアウト要件を満たすために採用しているが,過給有無や加減速時にEGR率が複雑な挙動を示すため,推定技術の改良を行った。例として,過給開始時の挙動を説明する。 自然吸気状態でEGRを導入すると,バイパス経路はると,スロットル,EGRバルブの開度は一定であっても,れるため,筒内に吸入されるEGR率は急激に低下する。この際,EGR率の低下に対応した点火時期の調整が行われないと,ノックを伴う異常燃焼が発生する。その後,SC回転数上昇によりバイパス経路の流れ方向が逆転すると,吸気ガスは循環しながら徐々に定常のEGR率に収束するこのような過渡の複雑なEGR挙動を表現するために,インマニモデルを5つの領域に分割し,各領域のEGR率や領域間のガス流量を計算するようにした。これにより過渡のである。検証には光学式の高応答ガスモニタを用いた。 No.36(2019) Fig. 4 A/F Lean SPCCI Control 2.2 A/FリーンSPCCI燃焼の制御 A/Fリーン混合気の排出ガスは三元触媒で浄化できないNOxが少なく,燃焼も安定しているFig. 4の緑のゾーンにSKYACTIV-Xの制御システムの主要なハードウェアコ

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