マツダ技報 2019 No.36
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7.2 燃焼指標の検出 -63- (Fig. 11)。その上で,ヘッドの曲面によりダイアフラム ③ ノイズ耐性 ② デポジットによる出力影響 Front Rear Diaphragm Connector (1) 概要 (2) 主要指標 ① 燃焼重心(MFB50) 燃焼重心とは,燃焼による熱発生が全体(終了時)の CPSで計測した筒内圧力から熱発生量を求めることができCPS Front Part Fig. 11 CPS Placement センサーとして,エンジン開発一般に使用されてきた。サーを用いた研究が数多くある。しかし,非常に高価であり,車載部品としての搭載性,耐久性などの要件も満たしていなかった。SPCCIの制御にはリアルタイムで燃焼状態を検知する必要があるため,車一台一台に統制できる部品としての要件を満たすセンサー(Fig. 10)の開発を行った。 ①フロント部で圧力を電気信号に変換する。高周波の圧力まで精度よくとらえるため,フロント部先端のダイアフラムは燃焼室に表出させており,燃焼ガスから直接受圧する。受けた圧力は軸方向の荷重に変換され,内部にある圧電素子で電気信号に変換する。 ②リア部ではフロントから受けた電荷をアンプで増幅しセンサーの最終的な出力に変換する。出荷時にアンプ特性の調整を行いハード上の個体差を吸収している。 ③接続部はエンジンレイアウトの自由度を上げるためリード線タイプを採用。ノイズ影響を検証しシールド等の電雑保護は行わず生産性とコストを向上させた。 車載する上での主要な課題である出力・信頼性・ノイズに対し,以下の対応を行って量産化を実現した。 フロント部は燃焼ガスから非常に強いストレスを受ける。単に部品強度を上げると応答性や精度が悪化するため,フロント部に対して品質工学を適用して最適となるパラメータ設計を行った。また,燃焼による瞬時の温度変化に対しては高応答熱流束センサーを用いてダイアフラムへの熱流束変化を確認しCAEによる放熱設計に組み込むことで信頼性基準を確保できるようネジ部からの放熱設計を行った。耐久寿命に関してはSPCCI燃焼時に発生する高周波の圧力変動を考慮し,通常の鉄鋼材料の耐久評価よりも厳しいギガサイクル(109回)疲労評価による検証を実施した。 ダイアフラムを燃焼室から奥に引き込むほどセンサーへのストレス環境は緩和されるが燃焼によるデポジットが堆積しやすくなり使用過程で出力影響が発生する。出力精度を求めるため極力燃焼室側に寄せることにこだわったマツダ技報 の一部にデポジットが堆積するのは避けられないため,堆積物のヤング率,厚み,付着面積に対する出力の影響をモデル化することで限界値を設定するとともに,運転状態によってデポジット堆積特性が変化するカラクリを明らかにし使用過程で出力限界に達しないことを検証した。 耐ノイズ性向上のため,エンジンに接する外筒と内部部品を絶縁分離した二重構造としシールド機能を持たせている。シールド性を保証するため製造上のコンタミ管理には徹底した配慮を行なっている。 エンジン制御ユニット(ECU)に筒内圧センサーの信号を取りこみ,信号処理を行い,燃焼状態を特徴づける指標を求めている。 筒内圧センサー本体同様,計測装置であれば信号処理にパーソナルコンピューター(PC)と同等の高性能なCPUを用いることができるが,限られた容積,電力,さまざまな温度環境で長期間動作しなければならないエンジン制御ユニット(ECU)では,PCの数十分の一の計算能力しか持たないエンジン制御用のマイクロコンピュータ(MCU)で処理を行う必要がある。更に,前述したさまざまな制御の精度向上にも,従来以上の計算処理が求められた。 そこで,SKYACTIV-XのECUはMCUを2個搭載して相互通信を行うことで,計算能力を倍増させるとともに,燃焼指標の計算においては,搭載されたMCUのデジタルフィルタ機能を用いる,必要なクランクアングル区間のみ高周波で信号を取り込む,などの計算負荷低減を行っている。 以下では,燃焼制御のために算出している指標について説明する。 半分まで進んだ時点のクランク角度のことである。毎クランクアングル,熱力学の方程式に従ってその時の体積とるので,燃焼終了後には燃焼重心を求められる。燃焼重心が圧縮トップ後数度にある状態が熱効率最大であることがNo.36(2019) Sensor, CPS)は,燃焼状態を把握するための最も重要なHCCI燃焼などの制御コントローラについても筒内圧セン(1) 構造 Fig. 10 Cylinder Pressure Sensor (2) 主要課題への対応 ① 信頼性と出力精度の両立

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