マツダ技報 2019 No.36
89/321

Fig. 4 Comparison of New and Previous Ring Structures -80- 3. ボディーの進化 Fig. 5 Adaption of Adhesive for Damping Fig. 6 Body Damping Feeling 3.1 操縦安定性・乗り心地 車両が運動する時,力を出すのは唯一路面と接してい新型MAZDA3は自分の足で歩いているときのように,バランス保持能力をクルマに乗っている状態でも発揮できるよう,路面からの入力がどのように乗員に伝わるかを考え,シート,ボディー,シャシーの全てを包括して機能を最適化した。 例えば,人の歩行時のように頭の動きが安定する乗り心地を実現させるには,路面からの入力をサスペンションで滑らかな入力に変換し,そしてボディーは滑らかな入力を遅れなく,ドライバーに伝えなければならない。 また意のままの操縦安定性を実現させるには,ドライバーの操作に対して車両が遅れなく応答する必要があり,そのためには4輪サスペンション間でエネルギーを遅れなく伝達しなければならない。 これに対してボディーは,入力の伝達ロスを減らし,骨格全体で入力を受け止め,更に路面から入ってくる振動エネルギーを減衰し,快適な室内空間を確保することを目指した。新しいアイデアを取り入れ,高剛性でありながら振動エネルギーを減衰する機能をもつボディーを実現した。 るタイヤである。タイヤ力は路面との接地荷重や角度で変動し,それをコントロールするのがサスペンションの役割である。そしてタイヤ力を,サスペンションを通して受け止め,人間の骨盤に滑らかに伝えるのがボディーの役割である。そのために,サスペンション支持部の強化や,ボディーの骨格を上下左右だけでなく前後方向にもつないで,多方向に環状構造を配置した(Fig. 4)。 これにより,ねじり剛性では先代比11%(5HB)の剛性向上を実現した。 また,路面入力に起因する振動はタイヤからサスペンションをとおして車体の骨格を伝達し,周辺の骨格やパネルを振動させる。サスペンション支持部の強化によって骨格に伝わる振動を抑制するだけでなく,サスペンションからの入力が周辺の骨格やパネルに伝達し,乗り心地や静粛性に関連する振動モードを励起させないよう,部分的に剛性をコントロールし,振動を伝達させない考え方を取り入れた。剛性値のみを追求するのではなく,骨格の“剛”と“柔”をバランスよく配置することで剛性感と減衰感を向上させた。 更に,従来から剛性感向上を目的として採用していた構造用接着剤に振動減衰の機能を付与した新開発の『減衰接着剤』を採用した。従来は振動抑制に対して質量と剛性をコントロールすることが一般的な手段であったが,新開発の構造減衰技術の採用により,質量に頼らず振動エネルギーを減衰することを可能にした。 この『減衰接着剤』による振動減衰効果を発揮するため,前述の“柔”に該当する箇所に振動によって生じた歪エネルギーを集中させ,この部位に対して『減衰接着剤』を積極的に採用することで,振動を効率的に減衰させるとともに質量増加を抑制した(Fig. 5)。 これら新技術採用による効果の一例を下図に示す。路面入力に対する乗員付近の振動レベル低減や静粛性向上を実現した(Fig. 6)。 マツダ技報 No.36(2019)

元のページ  ../index.html#89

このブックを見る