マツダ技報 2019 No.36
93/321

-84- 2.3 空力騒音の低減 走行中に発生する空力騒音は,ドアの形状や構造との関 この目標性能を実現するにあたり,2つの取り組みを行っFig. 1 Quietness Chart Fig. 2 Sound Insulation Target 2.2 達成シナリオ ねらいとする性能の達成手段を具体化するにあたり,マFig. 3 Technical Concept of Side Door (Fig. 3)。 (1)ドアサッシュ周り によって,護られているという心理的な安心感」,後者は静粛な空間によって感じる「快適性・居心地の良さ」をお客様への提供価値としている。続いて,具体的な車両の性能目標を設定した。快適性を測る指標として,CX-9の開発から適用している「会話明瞭度」を縦軸に,「荒れた路面での音圧」を横軸にとった指標を適用し,新型MAZDA3では静粛ゾーン内に性能目標を設定した(Fig. 1)。 続いて,車両を構成する各システムに対し,必要遮音量の配分及び目標設定を行った(Fig. 2)。 た。第一に,音源の低減である。車両の音源は,「エンジン音」「タイヤ音」「空力騒音」に大別できるが,ドアは「空力騒音」への影響が大きい。第二に,車内に透過・伝ぱしてくる音の低減である。音は「空気伝播音」と「固体伝播音」に分類できるが,ドアは「空気伝播音」に対する影響が大きく,「タイヤ音」と「空力騒音」が車内に進入する割合のおよそ半分をドアが占めることが分かっている。次節ではその性能をどのように達成したのかを述べる。 ツダが大切にしている2つの考え,第一に「人間特性から目標設定する」,第二に「物理現象を理論から制御因子を突き止める」を基に,3つの技術コンセプトを決定した第一に,音源となる空力騒音に対し,「面の連続化+通気経路のゼロ化」,第二に,室内へ透過・伝ぱする音に対し,「質量則使い切り+多重壁化」,第三に,乗員の側面にあるドアガラス部分からの透過音に対する,「ガラスの膜振動最小化」である。これら技術コンセプトから構造化までの取り組みを次項で述べる。 わりが深い。キャビン周りで発生するエネルギ損失量は空気抵抗になるだけでなく,一部が空力騒音となって車体を伝ぱし,乗員に騒音として伝わることが分かっており,車室内の快適性向上のためには,発生する渦を抑制し,空力騒音を低減する必要がある(1)。渦の発生を抑制するためには,車両周りを流れる空気の速度を変化させないことが重要だが,その重要な因子が車両外郭の形状である。また,車両にある小さな穴や隙から,流速の早い室外へ空気が吸い出される際に発生する通気音に対しては,先代アクセラでは,ドアのアウターハンドル周りが音源になることが評価により分かっている。これらに対する,新型MAZDA3の取り組み内容を以下に示す。 サッシュ周りの形状や構造は,外観デザインをはじめ,静粛性や居住性など,多岐にわたる機能を考えながら決定している。新型MAZDA3の開発では,特に空力騒音とシールによる遮音の機能に対し,各々の理想の姿と崖を明確にし,構造化を進めた。 まず,空力騒音に関しては,ピラー/サッシュ/ガラス面のフラッシュサーフェイスを理想状態と位置づけ,キャビンとサッシュの段差,サッシュとガラス面の段差のミニマム化を追求した。サッシュ周りの形状は,形状決定に関わる因子と因子ごとの渦の大きさに対する寄与度,及びそれらの数値の崖を検証し,具体的なガラス面からBピラーガーニッシュまでの段差高さや,ガーニッシュ前側の勾配角度に反映した(Fig. 4)。また,過去の知見(2)より,Aピマツダ技報 No.36(2019)

元のページ  ../index.html#93

このブックを見る