マツダ技報 2019 No.36
97/321

(2)閉まり性向上ドアチェッカー -88- 4. 達成性能 5. おわりに 参考文献 Fig. 14 Ideal Characteristics of Door Opening MAZDA3のアピールポイントの一つとすることができた。 Fig. 15 Wind Noise Level Fig. 16 Comparison with Theoretical Values (1) 岡本 哲ほか:次世代商品群の空力・空力騒音性能開発,(2) 清水 勝矢ほか:新型CX-9の静粛性開発について,マ(3) 永本 光一ほか:新型CX-5の静粛性開発について,マ(4) 伊藤 肇ほか:新型MAZDA3の静粛性開発について,ドアの閉まり性と開閉操作フィーリングの向上をねらい,スプリング摺動式ドアチェッカーを採用した。先代アクセラでは,小型・軽量が利点である,ラバーの弾性力を利用したラバー摺動式を採用していたが,上記メリットが得られる反面,ラバーの特性上,伸縮で発生するヒステリシスによってエネルギロスが生じていた。今回開発したドアチェッカーは,内部構成部品の寸法とスプリングの諸元を適正化することで,本体サイズを従来車で使用していたスプリング摺動式チェッカー比でおよそ10%小型化しつつ,スプリングのエネルギ蓄積量をおよそ40%増加させ,開き時に蓄積したエネルギを閉め時に解放することで,閉まり性を向上させた。また,ドア開き操作時の操作力遷移をアウターハンドル操作との連続性を持たせた特性とすることで,チェッカーの引き込み特性を強くしたドアで発生する,ドアを開ける操作がし難くなる問題も解消し,滑らかなドア開閉フィーリングを実現した(Fig. 14)。 前述の取り組みにより,車両全体でねらいとする静粛性目標を達成した(4)。ドア周りに関しては,各ピラー周りの空力騒音を先代アクセラモデルに対し,1~4dB低減(Fig. 15),遮音に関しては,インナーパネルエリアでは質量を殆ど増加させずに遮音性を向上させた(Fig. 16)。 また,ドアを閉めた際の静寂感に関しては,新型背反するドア閉まり性に関しても,閉まりに必要なエネルギを40%低減した。その他,新造形のアウターハンドルやヒドゥンサッシュ構造の採用による意匠性向上や,スピーカー搭載位置の変更による音響性能向上を実現した。 新型MAZDA3のドア開発にあたり,最も大切にする機能を端的に示すキーワードとして「遮る」を掲げた。従来,ドアは「開ける・閉める」に軸足をおいて開発してきたが,「遮る」を中心に考えることで,開発チームの意識や視点が,よりクルマ全体へ,また,動的性能を考えられるようになったことが大きな成長であった。 多くの新しい試みにより,さまざまな領域で本当に多くの困難に直面したが,それらを購買・物流・工場・品証・取引先様に至る全ての関係者の共創によって乗り越えることができた。その努力の結晶が本当に素晴らしい商品となったことは非常に感慨深い。今後も「飽くなき挑戦」の志を忘れず,「走る歓び」を体現したクルマ造りに取り組んでいく所存である。 マツダ技報,No.35,pp.21-25 (2018) ツダ技報,No.33,pp.33-38 (2016) ツダ技報,No.34,pp.20-24 (2017) マツダ技報,No.36,pp.96-101 (2019) マツダ技報 No.36(2019)

元のページ  ../index.html#97

このブックを見る