マツダ技報 2021 No.38
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―99―(Local Roads)2. 取り組みの考え方Fig. 1 Driving Example of Co-Pilot Concept Fig. 2 Risks of Driving EnvironmentFig. 3 Development Procedure of Lane Change 3.3 車線変更の行動分析と運転様式判別機能の構築 隣接車線の他車と他車との間に割り込む判断は,個人により異なる。この個人差を予測モデルに織り込むためToledoらの先行研究(6)であるGap Acceptance Decision model (GAD)(Fig. 4)を参考とした。このモデルでは,予測対象が割り込み可能と判断する車間距離(Critical Gap)をパラメーターとしてもつ。このCritical Gapを個々の危険許容度に合わせることで,精度及び先読み時間の向上が期待できる。 ここでCritical Gapをどう事前に設定するかが問題となる。この問題についてドライバーの操作特性には運転行動全般で共通な因子があると考え,車線変更前の加減速行動や車間距離により層別できると仮説を立てて車線変更予測に運転様式判別機能(Driving Style Estimation: DSE)を追加した。Prediction: Turn signal or Hazard flasherきた,間接的危険と死角的危険を予測する技術について報告する。 潜在的危険は不連続な走行環境の変化として現れる。そのため,その予測は運動方程式などの確定論的な手法ではなく,確率論的な手法を活用することになる。ビッグデータを利用しデータ駆動でモデル化していく技術が進歩してきているが,説明可能な状態でアルゴリズムの適用範囲を拡張していくため,全てをデータ駆動で構築するのではなく,人の行動を考えてモデル化し,その中に確率論的な振る舞いを織り込むことで性能を向上させた。 本稿では,これまでの検討事例として「他車の車線変更予測(間接的危険)」「飛び出し予測(死角的危険)」を説明する。3. 他車の車線変更予測(間接的危険)3.1 車線変更予測の課題 ドライバーが車を運転する際,周辺他車の行動を予測し,自車の行動を決定する。それをシステムが自動的に行う場合,前後方向については,レーダー等を用いて先行車との車間距離や相対車速をセンシングし,安全マージンを確保する行動決定が可能であり,車間距離制御装置(ACC)や衝突被害軽減ブレーキ(AEB)が商品化されている。一方,ジャンクションでの合流など他車の横方向の動きが生じる場面においては,あらかじめ車間距離を開けることや車線変更といった行動決定が必要となるが,車線間の他車の動きで対処しなければならず安全マージンが小さいのが問題である。 米国連邦運輸省の機関の1つである連邦道路管理局(Federal Highway Administration)が公開しているカメラから測定された交通データ(2)を用いて車両の動きを分析すると,平均的に車線を跨ぐ1秒程度手前まで,明確な横運動は発生しない。よって,目標達成には,車線変更の動きが出る前に関係する環境特徴を抽出し,予測に活用して精度を上げることが課題となる。3.2 課題解決のアプローチ 車線変更の判断を事前に予測手法として人の行動メカニズムに則したEndsleyの状況認知モデル(3)を参考にFig. 3 に示すStepで開発を進めた。Step 1: 他車の車線変更そのものの動きではなく,それに備える予備動作の特徴量化(図中➀)Step 2: 予測対象の状況認知をモデル化。他車を取り巻く相対位置や速度などの環境から予測(図中➁)Step 3: 予測対象の内面・個人属性を判断予測に反映。横運動以外の行動から特性を予測(図中➂) Step 1とStep 2は予測対象の車線変更の際の振る舞いや周辺車両との相対運動を利用して予測する技術として報告している(4)(5)。本報告ではStep 3について説明する。

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