マツダ技報 2021 No.38
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―106―ν2Pρρ=0 DDtDuDt2. 凍結防止塩散布地域の被水予測技術2.1 凍結防止塩散布地域における被水シーン 凍結防止塩散布地域においては,凍結防止塩により凝固点が降下することで溶解した雪により水たまりが形成され,このような水たまり上を走行する際に塩水が車体へと付着する。従って,海風により塩が運ばれ,車体へ一様に塩が付着する飛来海塩地域と異なり,凍結防止塩散布地域においては,走行中の被水量が車両の腐食因子として極めて重要である。被水シミュレーションを構築するにあたっては,走行中の被水シーンをFig. 1のように分類した。図中(1)の自車のタイヤによる水跳ねにより,サスペンションを始めとした車両下回りの部品やドア,エンジンルーム内の比較的低い位置にレイアウトされた部品が被水する。また,図中(2)の前走車からの水跳ねにより,ドアやボンネット,ルーフといった車両外板の他,フロントグリルを通過しエンジンルーム内の車両前方側にレイアウトされた部品が被水する。新規に開発する被水シミュレーションにはこれら2つのシーンを再現可能であることが求められる。2.3 粒子法の概要 本研究では,粒子法の中でもMoving Particle Simulation (MPS) 法を用いたプロメテック・ソフトウェア(株)製の流体解析ソフトウェアであるParticleworksを用いて解析を行った。MPS法は,有限個の粒子により非圧縮流れの支配方程式を離散化する計算手法である。非圧縮性流れの支配方程式は連続の式(1)とナビエ・ストークス方程式(2)である(9)。(1)(2)ここで,ρ:密度,u:速度,P:圧力,ν:動粘性係数,g:重力加速度である。3.1 実験方法 被水シミュレーションを開発する上で,実車の水跳ね挙動及び被水箇所の可視化に取り組んだ。(1)タイヤによる水跳ね 実車の走行中,タイヤにより跳ね上げられた水の挙動を明らかにするために,水深10mmに設定した試験路の上を走行し,水の飛散を車両前方及び後方から高速度カメラにより撮影した。このとき,水の飛散に及ぼす車速の影響について調べるために車速は20,40,60km/hの3水準とした。(2)前走車からの水跳ね 前走車からの水跳ねによる被水を再現するために,風洞試験室において車速100km/h相当の風を与えながら,車両前方に設置したノズルから水を散布した。ここで,フロントグリルやラジエーターへの通過といったユニークな現象があるために,シミュレーション化が最も困難なエンジンルーム内の部品における被水箇所の面積率を指標としてシミュレーションを開発した。開発を行う上で,被水した際に赤く変色する被水検知薬をエンジンルーム内の部品へ塗布し,エンジンルーム内の被水箇所の可視化に取り組んだ。3.2 実験結果(1)タイヤによる水跳ね 車速60km/hで走行した際のタイヤによる水跳ねをFig. 3に示す。水は車両の前方及び横方向へと飛散しているが,このとき,横方向へ飛散する水に注目すると,車両進行方向に対して正面視でおよそ45°の角度で飛散していることが分かる。車速の増加に伴い,タイヤから跳ね上げられた水の最高到達高さは高くなるものの,その飛散角度はおよそ45°で一定であった。(2)前走車からの水跳ね 車両前方から散布された水は,フロントグリルを通過してエンジンルーム内へと侵入し,エンジンカバーやオイルパンなど広い範囲で被水が認められた。侵入した水はそれぞれの部品へ付着した後,風の影響を受けて車両後方側へ流れていた。3. 水跳ね挙動の可視化(2)(1) Water Water Fig. 1 Schematic Illustration of The Splash in The Region Where Anti-freezing Salt is Spread2.2 被水シミュレーション技術の課題と対応 車両周りの流体解析を行う上では,解析空間を格子状に分割し計算点とする格子法を用いるのが一般的であり,これまでに多くの研究が報告されている(7)(8)。しかしながら,今回対象としている自車のタイヤによる水跳ねや,前走車からの水跳ねの飛散を格子法で再現する際には,広大な解析空間を格子により微細に分割する必要があり,計算コストの増加が課題になる(Fig. 2(a))。更には,流体をオイラー的に計算する格子法では水やオイルのような液体特有の分裂や凝集といった挙動を再現するのが困難である。そこで,流体を粒子の集まりとして表現する粒子法に着目した。粒子法を用いることにより,計算コストを小さくするだけでなく,車両周りにおける水の分裂や凝集といった現象の再現が期待される(Fig. 2(b))。(a) (b) Fig. 2 Schematic Illustration of The Simulation Concepts (a) Grid Method (b) Particle Method=−∇=∇+ug

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