マツダ技報 2021 No.38
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(2)前走車からの水跳ね 前走車からの水跳ねのシミュレーション結果をCase2においてインポートした気流速度データとともに,車両右半分の断面図で示す(Fig. 7)。フロントグリルから流入した風はエンジンカバー上方及びオイルパン下方を通り,車両後方まで流れていく(Fig. 7(a))。このとき,気流速度データをインポートし,パラメーター設定を行ったCase2は,気流速度データをインポートしていないCase1に対し,粒子がエンジンルーム内の車両後方まで飛散しており,インポートした気流に対して粒子が追従していることが分かる(Fig. 7(b,c))。更に,エンジンルーム内に侵入した水粒子により被水した箇所を可視化するために,解析モデルに対する粒子の衝突箇所を元にマッピングを作成し,実車の被水箇所との比較を行った。図中の数字は被水箇所の面積率を表す(Fig. 8)。Case1では,エンジンカバーやオイルパンの前端までしか被水が認められず,面積率も一致していないのに対し(Fig. 8(c, d)),気流速度データをインポートしたCase2では,被水箇所がより後方まで拡大しており,面積率についても実車とよく一致している(Fig. 8(a, b, e, f))。従って,被水シミュレーションの精度向上を図る上で,車両周りの気流速度データをインポートし,解析を行うことが有効であることが分かった。―108―l0iotAmount f waerreceved]s/m[ yticoeV4.3 シミュレーション結果に対しての考察 4.2.(1)項において,MPS法を用いて開発した被水シミュレーションがタイヤからの水跳ね挙動をよく再現できていることを明らかにした。更に4.2.(2)項において,車両周りの気流速度データをインポートすることで,前走車からの水跳ねが車両周りの気流に追従する様子を再現可能であることを明らかにした。これらの知見を踏まえ,自車のタイヤによる水跳ねと前走車からの水跳ねの両方を併せて予測できる被水シミュレーションを開発した。気流速度データを用いずに解析した結果(Fig. 9(b))に対し,車両周りの気流速度データをインポートすることにより,自車のタイヤによる水跳ねと前走車からの水跳ねの両方が気流に対して追従しているのが認められる(Fig. 9(a, c))。更に,実車走行後の被水箇所を被水検知薬により,被水シミュレーションにおける被水箇所は粒子の衝突情報を元にマッピングを作成することでそれぞれ可視化し,被水箇所の比較を行った。図中の数字は被水箇所の面積率を表しており,被水箇所及び面積率はよく一致していることが分かる(Fig. 10)。なお,当初懸念されていた計算コストについても,MPS法という新規手法を用いることにより,解析の開始から完了までおよそ10時間と実用上問題のない解析時間に抑えることができた。Front25(a)(a)(b)3%(c)8%(d)(b)1%4%(c)(e)(f)4%Large10%SmallFig. 7 Simulation Results of Splash from Vehicle Ahead, Showing The Cross Section of The Right Part of Vehicle(a) Airflow Velocity Data Imported for Case2, (b) Case1 (without Airflow Velocity), Fig. 8 Comparison of Areas Water Received between Experiments (a, b) and Simulations without Airflow VelocityData (c, d), with Airflow Velocity Data (e, f) at Engine Cover (a, c, e) and Oil Pan (b, d, f)(c) Case2 (with Airflow Velocity)

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