マツダ技報 2021 No.38
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―112―Fig. 4 Bending Strain of Core PinBending ≥ 1mm Wall Core Pin for Molding “Main Oil Gallery” Location of Strain Gauge Strain Gauge Injection Filling Completion Continuous Strain Fig. 1 Conventional Structure(Simply Butting Pins)Fig. 2 Current Structure(with Wall)3. 鋳抜きピン曲りのメカニズムFig. 3 Measurement Structure(of Verification Die) ダイカスト工程の最初から最後まで(型締め→注湯→射出→凝固(チル)→離型)を連続的に測定することで,Thermocouple 間を設けた状態(Fig. 2)で鋳造することで曲り量を軽減した。しかし,隙間を設けることで無用な壁が形成されるため,これを貫通する加工と,軽減したとはいえ残存する曲りを勘案した加工が必要になっていた。そこで,鋳抜きピン曲りのない貫通した穴の最終製品形状を成形することを理想に掲げ,目標値を「穴曲り0.1mm以下」と設定した。目標達成に向け,鋳抜きピンが曲るメカニズムの解明とモデル化,それを制御する金型技術の確立に取り組んだ。 鋳抜きピン曲りのメカニズム解明に向け,ダイカストの各工程における鋳抜きピン挙動の計測技術を開発した。 ダイカストは,閉じた金型のキャビティ内に溶湯を高速(≧60m/sec)で射出して高圧(≧約60MPa)で成形する工法のため,キャビティ内にある鋳抜きピンの挙動を直接観察することはできない。そこで,鋳抜きピン内部や金型に固定している構造部に熱電対やひずみゲージを設置した4気筒シリンダーブロックのテスト金型を製作し,間接的な挙動測定を実施した(Fig. 3)。鋳抜きピンの曲りに関係していた2工程を明確にし,実測データ分析から曲りのメカニズムを推定して定式化(=モデル化)した。以下,メカニズム解明とモデル化の取り組みを紹介する。3.1 射出工程での溶湯衝突による曲り(1)溶湯衝突曲りメカニズムの推定 射出工程は,高速射出から充填完了までが0.1sec以内のため,キャビティ内を流れる溶湯流速は60m/secを超える。そのため,溶湯が鋳抜きピンに衝突する際には大きな衝撃荷重が作用し,曲りが発生していると推測した。曲りの発生は溶湯衝突の瞬間から極短時間であると考えられ,溶湯流速等から勘案すると,この現象をとらえるために必要な計測単位の細かさは0.001sec以下であり,高速度応答の計測が必須となる。そこで,鋳抜きピンに直接ひずみゲージを貼り付けて計測する構造を考案した。 鋳抜きピンは金型に開けられた勘合穴の裏面から差し込んで設置する構造となっている。そのため,キャビティ部で発生した曲げひずみは金型差し込み部でも検出が可能と考え,キャビティ部から3mm内側の勘合部に設けた平面にひずみゲージを設置した。ひずみゲージで曲げを測定するには,曲がりが発生している部分の対面する圧縮面と引張面にひずみゲージを張り付ける必要がある。そのため,一方向の設置では鋳抜きピンの曲がり方向と直角の場合に検出できない可能性があるため,角度を90°ずらした二方向に配置し計測した。その結果,射出~充填完了の間にインパルス応答関数に近似した振動の発生をとらえることができた(Fig. 4)。 以上より,鋼材の構造体である鋳抜きピンに衝撃荷重が作用して曲げ(振動)が発生していると考えた。この振動波形を分析すると,射出直後から振動が発生し始め,その後次第に減衰しているが,減衰中心が振動発生前と比べてずれている。このため,振動発生時に鋳抜きピン突合せ部に発生した隙間に溶湯が侵入,急冷凝固して堆積し,鋳抜きピンが曲がった状態で成形されるメカニズムであると推定した。

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