マツダ技報 2021 No.38
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―5―3.4 ホイール及び空力デザイン 電動化をリードするクルマとして期待されるエアロダイナミクスはスモールプラットフォーム群での検討を生かし,空気抵抗はもちろん,ハンドリングや風騒音も高いレベルでデザインに反映している。その中でもアルミホイールは,クラッディングのシャープな工業デザイン的処理になじむような造形とし,平板になりがちな空力対応に対して,二つのホイールがレイヤーで重なったようなモチーフとして立体感と軽快さを確保している。このアルミホイールを代表としてその他の空力処理も強くそれを主張しないようにしている(Fig. 8)。Fig. 5 Free Style Door and Egress/EgressFig. 6 Exterior Production Image3.3 フレームドトップ(3トーン塗装) パッケージ上キャビンをもっと軽く見せたいという思いは,FSDは元より外板色にも及んでいる。デザイナーFig. 7 Framed Top CabinFig. 8 Aerodynamics Detailsナーの方が使われている動画であった。FSDにはもっとさまざまな可能性があることに気づかされた。また社内にもRX8でのFSD経験者が居ることも参考となった。子供が小さい時に後席ベビーシートに乗降させる際に体の負担が少ないこと,顔を見ながらの所作によるコミュニケーション等,リアルなフィードバックが次々と寄せられた。結果これを使わない手はないという結論に達した。 同時にデザイナーとエンジニアによるパッケージ検証が行われた。サイドビューはリア席の乗降ラインからDLO(Day Light Opening)ラインの自由度が高まることがすぐ分かり,サイドビューの再構築にかかった。RX8でも4人乗りのスポーツカーを作るソリューションとして採用されたものなので印象は一気に軽くなった。しかしドアを支えるストライカー&ラッチ部分は最新の安全要件を想定し前席乗員の頭上空間を確保しようとすると折り合いが付かないばかりか,単純に要件を織り込むとサイドウィンドウタンブルを垂直に立てることになり,正面視及びクォータービューでのキャビンバランスが悪くなる課題に直面した。機能レイアウトや構造図面を睨みながら,キャビンボリュームをエンジニアと何度となくやり取りを行いキーとなるドアストライカー位置をミリ単位で見出していった。量産ステージに移行後も,ドア強度と視界の両立を始めとしたリアルワールドでの性能を満たすための検討が続いた。更にFSDとしての使い勝手を高めるために,ドアヒンジの新設によるドア開度の拡大にまで踏み込み,デザイン修正を伴う作りこみは開発終盤まで徹底的に行われた(Fig. 5)。はこの思いからスケッチの中でクラッディング(黒色のシボパーツ部)の表現に合わせてキャビンを2トーンに描いていった。同時にプロポーションの中でFSDによるルーフサイドの特徴を個性として訴求するアイディアに発展していく。開発呼称「フレームドトップ」と名付けた,ルーフセンターを黒落しにし,逆に流麗なルーフサイドをメタリックで際立たせる3トーン塗装の提案である。多重塗装は近年のマツダの工場では設備がなくデザインからの提案も憚られる案件でもあった。関係者の協力を得るため,色表現の発展性含めた魅力を積極的に伝えることで,ビジネス性確認も含め共感を引き出し,実現可能な手段へと落とし込んでいった。その中での検討は,量産工程でのサブラインの確保,フィルム化の検証,マスキングを想定したデザイン構成の変更等,検討項目は双方向的に多岐にわたっている(Fig. 7)。

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