マツダ技報 2021 No.38
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 2つのバネのうち,バネ定数の小さいバネ α についてアルミ排出荷重を掛けて縮めた状態でセットしておき,その荷重まではバネ定数の高いバネ β 単独の荷重特性で摺動させる。このときの式は(e)であり,僅かな摺動量で荷重を増加させることができる。バネ β がバネ α の荷重に達すると,バネ双方が縮み始めるが,このときバネ α とバネ β が直列合成された式(f)となり,摺動量に対して荷重が小さくなる。 この2重バネ構造により,バネ単体構造に対して約半分のスペースで,金型内に設置可能となった。……(e)……(f)ここで,Fβ:バネ β の荷重[N],kβ:バネ β のバネ定数―115― x Fig. 12 Core Pin Displacement in One CycleFig. 13 Aluminum Penetration to Sliding PartFig. 15 Double Spring Load CharacteristicFig. 14 Spring Load Characteristickkαβ+kkαβtotal=Fβ=kxThermal Expansion Clamping Penetration Injection Release Penetration Buckling Load Pressing Load Sliding Load Buckling Load Pressing Load FβDischarge of Aluminum Piece No Bending Region Sliding Load Spring βDischarge of Aluminum Piece Absorption of Thermal Expansion No Bending Region Absorption of Thermal Expansion Spring α+β そこで,この構造をテスト型に織り込んで実鋳造にて確認した。このときに,バネの動作と鋳抜きピンの動きを数値化するため,鋳抜きピンに軸方向の変位センサーを設置して鋳造した。そのときの変位量測定結果をFig.12に示す。スライドの型締め動作を利用してバネを収縮させて軸荷重を与え,射出工程ではバネの収縮により熱膨張量を吸収することができた。 しかし,金型が開いて製品が離型されることで鋳抜きピンは初期位置に戻るが,サイクルを重ねると初期位置に戻らなくなる現象が発生した。そのときの状態を確認すると,鋳抜きピンと金型の摺動部に薄いアルミの破片が入り込んでおり,摺動抵抗が増加して鋳抜きピンが動かなくなっていた(Fig. 13)。 アルミの破片は,溶湯充填時に鋳抜きピンと金型勘合穴の隙へ溶湯が侵入して凝固したものであり,鋳造を重ねるにつれて少しずつ堆積していく。鋳抜きピンの摺動時には,金型勘合穴との摩擦力に加えてアルミ破片の剪断力が摺動抵抗となる。この摺動抵抗がバネによる軸荷重よりも大きくなることで鋳抜きピンが動かなくなったと考えられる。そのため,金型離型時にアルミ破片を排出するための軸荷重と摺動量を満たすバネ荷重特性を検討した。このとき,バネ定数が大きいと熱膨張時に鋳抜きピンの座屈荷重に達してしまうため,バネ定数はできる限り小さくする必要がある。 ここまでを踏まえたバネ荷重特性をFig. 14に示す。アルミ破片を排出する軸荷重をかけた状態で金型に組み込み,突き当て後に摺動量分を更に押し込んだ状態で鋳造開始する。そのときに,前出の軸荷重判定式以上の荷重となっている必要がある。鋳造中は熱膨張吸収の摺動があっても鋳抜きピンの座屈荷重未満で推移する。 しかし,以上の条件を満足するバネを単純に選定すると金型サイズに対して非常に長い自由長となる。そこで,各過程で理想のバネ荷重特性を考えると,鋳抜きピンを突き当てたときにアルミ破片排出のための必要荷重以上に瞬時に達し,その後は荷重を維持したまま摺動すればよい。つまり,初期の短い摺動間ではバネ定数を大きくし,一定の荷重に達したときにバネ定数の小さく長いストロークのバネに変化する2つの荷重特性をもつということである。そこで,バネ定数の違う2つのバネを直列に並べた「2重バネ構造」を考案し,理想のバネ荷重特性を実現した。そのときの荷重特性をFig. 15に示す。

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