マツダ技報 2021 No.38
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[N/mm],x:ストローク量[mm],Ftotal:バネ α とバネ β の合成荷重[N],kα:バネ α のバネ定数[N/mm]―116―:Pin ① Outline:Pin ② Outline:Pin Center 佐々木 大地 河野 一郎 Fig. 16 (Measured)Pin Bending of Double Spring また,鋳抜きピン曲りのメカニズムを解明してモデルを構築したことで,溶湯衝突時に必要な軸荷重から熱膨張量までをCAEで検証する方法も確立した。そのCAE結果から,鋳抜きピン位置を溶湯流速の速い鋳込みゲート側に設置したテスト型を製作して実鋳造確認したところ,同様に曲りのない突合せ穴を成形することができた。Fig. 17にそのときの試作品を示す。Fig. 17 Trial with Mold Equipped Additional Pin5. 成果6. おわりに:Pin ① Outline:Pin ② Outline:Pin CenterWithin ±0.05 Within ±0.05 Hole By Additional Core Pin  以上の構造を金型に織り込み鋳造確認した結果,目標値のメインオイルギャラリ穴曲り0.1mm以下に対し,半減の0.05mm以下で完全突合せを達成し,機械加工レス成形を実現した。測定結果をFig. 16に示す。 以上のように汎用性の高い技術であり,今後さまざまなダイカスト部品へ応用することで,更なる製品機能の向上に貢献する。 これまでダイカストにおける鋳抜きピン曲りは常に発生するものであり,発生した曲りに対して金型を補正することで対処してきた。今回,鋳抜きピン曲りを事前評価する金型設計技術を確立したことで,製品設計の段階から製品機能と生産性を両立する鋳抜きピン提案ができるようになった。この活動を通じて,現状に満足しない問題意識の構築と現象の現場現物による詳細な分析,課題解決まで諦めずに考え抜くことの重要さを再認識できた。 また,ダイカストにおいて高精度な品質の製品を造りだすためには,瞬間的な溶湯の挙動や金型温度変化を正確にとらえることが必要であると分かった。現在,溶湯から金型内部までの詳細温度分布測定に取り組んでおり,新製品のモデルベース開発による評価・改善・改良と機能向上に貢献する金型技術の更なる向上を目指していく所存である。 今後も,全てのステークホルダーへ笑顔を届けられるクルマ造りに向けて,技術革新への挑戦を続けていく。 この論文は(株)日刊工業新聞社 型技術2021年7月号に投稿した内容に追記・転載したものです。■著 者■山本 綾人小国 英明重里 政考 藤井 祥平

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